グリセレブ®の話
最近脳出血患者さんが多く、浸透圧利尿薬を使用する機会が多いため、本日は濃グリセリンおよびマンニトールについて述べたいと思います。
当院では前者はグリセレブ®、後者はマンニトール®が採用になっています。
■浸透圧利尿薬の薬理作用
基本的には、「利尿薬」というよりも、「(細胞内から自由水を移動させて)浮腫を取る薬」と捉えると良いと思います。尿が出るのはあくまでも「結果」ということです。
■グリセレブ®の成分
グリセレブ200㎖は下記のような組成になっています。
添付文書はコチラ
⇒http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065792.pdf
ポイントとしては、
・Naが30meq入っている
・濃グリセリン20g×4kcal+果糖10g×3.7kcalでおよそ120kcal
の2点です。(詳細は後述)
■使用するのはどんな時か、どんな注意点があるのか
基本的には頭蓋内圧亢進に対して用いる薬剤です。
脳卒中ガイドライン2015では、「高張グリセロール静脈内投与は頭蓋内圧亢進を伴う大きな脳出血の急性期に行うことを考慮しても良い(グレードC1)」とされています。
ちなみに、Dynamed®のintra cerebral hemorrhageのtreatmentでは以下のような記載になっていました。
国内の使用感に比較すると、やっぱりどちらかというと少量で、文献的根拠に乏しいとの評価のようですね。海外の実際の臨床がどうなっているのか、というのは私は経験がないので分かりませんが。
グリセレブ®とマンニトール®の使い分けとしては、「マンニトール®のほうが素早く効くけど、効果が持続しない」(マンニトール®は40-50分で、グリセレブ®は1-2時間で作用のピークを迎えるらしいです)と言われているので、術前や緊急で脳圧を下げたいときはマンニトール®、ICUなどで脳圧の管理をしたい場合はグリセレブ®
のように使い分けていることが多いと思います。
そして肝心の注意点ですが、非常にシンプルに言えば、
①心不全
②高血糖
③脱水
の3つです。敢えてイメージしやすい言葉で記載しましたが、
①についてはグリセレブ®そのものがNa負荷になりますので、心機能の低い患者さんでは前負荷上昇による非代償性心不全を来たす場合があります。
②については含まれる糖分によるものです。
③に関しては、尿量が修飾されるので「実は血管内はhypoになっていた」なんてことも起こりうるということです。「オシッコ出ているのにすごい高Na血症なんですよね」と言われてみるとグリセレブ®の影響だったりするわけです。
【参考文献】