救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の知識のまとめをしたり、論文や本を読んで感想文書いています。日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の実臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.Twitterもやっています(https://twitter.com/ryo31527)

大動脈弁狭窄症の話

お久しぶりです。現在、外病院に出向中です。たまたまその病院で径カテーテル大動脈弁留置術(Transcatheter aortic valve implantation; 以下TAVI)を見学しました。

集中治療管理において大動脈弁狭窄症(Aortic  stenosis; 以下AS)があると苦戦しますが、その症例ではsevere ASが30分程度でmild ASになっていました。技術の進歩ってすごいですね。

 

今日は、良く出会う大動脈弁狭窄症に関するまとめです。

 

1.大動脈弁狭窄症の概論

2.大動脈弁狭窄症の重症度

3.大動脈弁狭窄症の治療

 

の順にお話ししたいと思います。

 

1.大動脈弁狭窄症の概論

大動脈弁狭窄症は弁膜症全体の25%を占めており、60−70歳に多いです。
原因としては、
 
・二尖弁(人口の0.5−1.4%に見られる、男性に多い。上行大動脈瘤を合併することがあり、40mm以上では手術が必要になる)
・リウマチ性
・加齢性硬化性変化
 
が主です。65歳以上では約30%に大動脈弁の石灰化があり、2%に明らかな狭窄があると言われます。大動脈弁の狭窄があると、左室は慢性的な圧負荷にさらされるため、求心性肥大を来します。
 
労作時にout putが足りなくなったり、心房細動や房室解離で適切な時相で心房収縮がなくなると労作時呼吸苦・失神・胸痛などの症状が出ます。
 どのタイミングで治療介入するかは重症度と症状で大部分が決まるので病歴もとっても大事です。また症状がでたsevere ASは予後が不良で、その平均余命は狭心症5年、失神3年、心不全2年と言われています。
 

(以上、ハリソン内科学第4版、p.1686から一部引用)

 

2.大動脈弁狭窄症の重症度

大動脈弁狭窄症の重症度は経胸壁心臓超音波で評価します。

まずは、左室肥大および大動脈径の拡大がないかをチェックします。そのうえで、ASの原因が先天性か、リウマチ性か動脈硬化性を判断します。

重症度評価に関しては以下のように複数の指標で評価を行います。

 

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(日本循環器学会.弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン(2012年改訂版).p19から引用)

※心尖部左室長軸像で、CWを用いて大動脈弁圧格差測定を行うと、最高血流速度と収縮期平均圧格差を測定することができます。AVA(弁口面積)はトレース法とLVOT径、LVOT-VTIを用いて計算する方法があります。

 

3.大動脈弁狭窄症の治療方針

基本的には、無症状のASはその程度に関わらず予後は健常群と変わらないため、軽度であれば内科的に1-2年毎に経過観察となります。ただし、severe ASの場合は2年以内の心事故率が高いため3-6カ月おきに外来で心臓超音波を含めて経過観察する必要があります。

症状(狭心症、失神、心不全)が出れば手術適応となります。

この症状がよく問診しないと聞き漏らすことがあるので注意が必要です。

 

TAVIの適応については、http://tavi-web.com/professionals/indication/index.html#を参照してください。ポイントとしては、透析患者や感染性心内膜炎の患者は適応がないことと、あくまでもAVRのリスクが高い患者が対象になっている点であると考えます。

(BAVに関してはかなり状態が悪い場合でも適応あるんだな…というのが正直な感想です)

 

とても簡単ですが、日常よく見る大動脈弁狭窄症に関してまとめました。

心臓超音波や聴診で「ASがありそう」と思ったら、循環器内科に相談もしくは自分でmean PGくらいは測定しても良いかもしれません(そのうえで重症度が高ければ循環器内科にフォローをお願いする…と)

いずれにせよ、偶発的に見つかったASなのか、症状があって見つかってのASなのかでだいぶ違いますので外来をやる場合には要注意ですね。

 

それでは。