救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の知識のまとめをしたり、論文や本を読んで感想文書いています。日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の実臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.Twitterもやっています(https://twitter.com/ryo31527)

亜鉛欠乏の話

今回は、最近カンファレンスで話題になった亜鉛欠乏に関して、です。正確には亜鉛欠乏による皮膚症状や貧血が話題になったのですが、良い機会なのでまとめてみました。
 
今回の話の内容は
1.どんな時に亜鉛欠乏を考えるのか
2.どのように診断・治療するのか
3.補充後の注意点
の3つです。
 
ちなみに、微量元素は、「体内の含有量が鉄と同等以下の元素」と定義されています。(1)
中心静脈栄養用の微量元素製剤は、Mn含有かどうかで大きく分かれますが、基本的に「鉄・マンガン亜鉛・銅・ヨウ素」を含んでいます。セレンやクロム、モリブデンなども微量元素ですがルーチンで入っていないことも多そうですね。
 
さて、前置きはこれくらいにして本題へ入りましょう。
 
 
1.どんな時に亜鉛欠乏を考えるのか
臨床的には、ここが一番大事かなと思います。どんな時に亜鉛を測定すれば良いのかということです。
 
リスクが高い患者群と、亜鉛欠乏を疑う症状について調べてみると
 
①リスクが高い患者

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亜鉛欠乏を疑う症状

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(いずれも2より引用)
 
簡単にまとめると、「肝障害や、腎障害があったり慢性の消耗性疾患のある患者や、糖尿病のある患者」(かなり該当する患者さんが多そうですが)で、「口内炎や皮膚のびらん、貧血やALPの低値がある人」では測定を考えても良さそうです(ALPが亜鉛をもとに作られる酵素なので亜鉛欠乏を反映するそうです)。
妊婦さんでも気をつけないといけませんね。
 
ちなみに亜鉛欠乏による貧血は、赤芽球の分化に亜鉛が必要なためで、亜鉛欠乏による貧血は正球性もしくは小球性の貧血で、TIBCは低下してます。
 
2.どのように診断・治療するのか

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診断そのものは亜鉛を測定すれば良いので、そこまで難しくはなさそうです。他のビタミンや微量元素の欠乏症と同じで症状があれば基準範囲でも亜鉛欠乏症として治療を行います。
 
補充の方法は、成人の場合は50-150㎎/日を補充します。期間は症状に併せて、となりますが例えば亜鉛欠乏による貧血では25-50㎎の亜鉛投与で、数か月改善にかかるようです。
 
3.補充後の注意点
亜鉛補充による副作用としては、消化器症状、膵酵素の上昇などがあります。亜鉛投与に伴って、鉄や銅の低下を引き起こすことがあるので、長期内服する場合は、亜鉛に併せて鉄や銅に関しても測定するようにしましょう。
 
今回の記事に関しては、up to dateも参照しましたが、参考文献にある「亜鉛欠乏の診療指針2016」が非常にまとまっていて勉強になりました。実際に亜鉛欠乏症の診療をする際には一読することをおすすめします。
 
それでは。
 
【参考資料】
1.重症患者の治療の本質は栄養管理にあった.真弓俊彦編.羊土社.2014年.p.82-84.
 
2.日本臨床栄養学会編.亜鉛欠乏症の診療指針2016(http://www.jscn.gr.jp/pdf/aen20170613.pdf