救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の知識のまとめをしたり、論文や本を読んで感想文書いています。日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の実臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.Twitterもやっています(https://twitter.com/ryo31527)

国家試験を終えて、研修医を迎える先生方へのメッセージ

こんにちは。今回は、文献や病気の話などではなく、これから初期研修医になる先生方へ向けてのメッセージです。

長々と記事を書きますが、何が一番大事かと言うと「自分の頭で考える」ということに尽きると思います。

 

①今から考えておいたほうが良いこと

②研修医の間に勉強したほうが良いこと(医学以外)

③研修医の間に勉強したほうが良いこと(医学)

 

の3つについて述べたいと思います。完全に個人の経験談になりますから、話半分でお願いします。

 

①今から考えておいたほうが良いこと

「自分の人生にとって何が大切か」を考えておいたほうが良いと思います。

一般的に、初期研修を2年やって、専門医のプログラムに3年のって、研究したり留学したり…ということを考えている方が多いかもしれません。

 

しかし、実際は皆さんの目の前にはもっと多くの選択肢が現れます。例えば、私自身の周りを見てみると、勿論医者をやっている人が多いですが、美容整形に行ってテレビに出てる人、整形外科医をやりながら会社経営をしている人、医者をやめてトレーダーになった人、精神科医から救命センターの医者になった人、何をやっているか分からないけれど年収1億円ある人、世界一周旅行に出ている人、初期研修医の頃から有名誌に論文を乗せた人、民間向けに色んなイベントを開催している人など、様々です。

 

勿論、各々が色々な批判や逆風にさらされながら、自分の夢や信念を求めて生きているわけですが、実はいわゆる「既定路線以外のパターン」もたくさん世の中にはあります。

今までは「医学部に合格する」とか、「国家試験に合格する」など、当座の分かりやすい目標(しかも周囲と共有しやすい目標)があったわけですが、これからは個々人の目指すところは全く違ってきます。

 

つまり、医学生を終える皆さんは、自分にとっての「成功」を自分で定義して、生きていく必要があります。

何も仕事のことだけではなく、どこに住んで、だれと生活を共にして、何を得て、何を捨てるのか自分の感情や価値観で決めなくてはいけないわけです。(正確に言うと、決めなくてはいけないというよりは決められるのでそうしたほうが良いという勧めになりますけど)

 

なので、漠然と「研修終わったら面白そうな(QOLがよさそうな、やりがいのありそうな)〇〇医になります」と決めてしまうより、もっと皆さんには色々な可能性があることを知ったうえで様々な選択をして欲しいと思います。

 

 

 

 

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②研修医の間に勉強したほうが良いこと(医学以外)

医学以外に学ぶことといえば、「社会の仕組み」と「他社の多様性」の2点が重要と思われます。もともと医学と言うのはかなりガラパゴス化した分野でありました。

昔の先生の話を聞けば、「病院に寝泊まりしていた」「正月に酒を飲んでいたら呼ばれて、緊急手術をした」「女を捨てて頑張った」「芸をして手技をやらせてもらった」なんて話はポンポン出てくると思います。

しかし、現在の世の中では労働基準法や、パワハラ・セクハラ、高齢化社会を迎えるうえでの医療の在り方、少子化の中での(医師に限らない)働き方やキャリアアップなど様々な議論が展開されています。

国の医療費は切迫し、国際社会情勢は緊迫しています。AIの登場で医療システムそのものは必ず変革されるでしょう。

 

そんな中で、「医者は仕事をしていれば食いっぱぐれない」と言うのは少し見通しが甘いと思います。

「今世の中はどんなことが問題になっていて、それが自分にどう関わりそうか」、関心を持つことは大切です。医者に限らず、今までの世界での当たり前は、どんどん崩壊していくと私は思っています。変化していく社会の中で医学や医療者は何を求められるのか、見極めたいものです。

 

「他者の多様性」に関しては、「他人は自分と違う」という、当たり前のことを知っておけば、日々の生活の中で自然と理解できると思います。医学部から病院と言う場へ生活が移れば、パラメディカルの方意外にも、病院に出入りする業者さん、患者さんなどなど様々な背景の人と触れ合いながら生活していくことになります。けっこう医者同士でも背景や価値観が違って、びっくりするかもしれません。

 

人間と言うのは常に合理的ではなくて、直せる病気の手術を拒んで亡くなる人や、COPDになっても煙草を吸い続けたい人様々です。(これは①で紹介した色んな生き方を選択する人がいるということと同じですね)

 

そんな異質な人たちと、社会に出た後は議論や折衝をしながら生きていかなくてはならないわけです。

 

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③研修医の間に勉強したほうが良いこと(医学)

さて、いよいよ医学の話ですね(笑)この話題に関してはインターネットでも多く情報があると思うので、具体的には書きませんが、ポイントは「臨床上の疑問を必ず信頼できるソースで確認する」ことだと思います。

Up to dateでもDynamedでも、ガイドラインでもハリソンでも構いませんので、担当患者さんの病状や治療については逐一調べるようにしましょう。

そのうえで、指導医と議論が出来ればよいと思います。(とは言え、最初の最初は何も分からないと思いますので、指導医に「〇〇さんの治療の件で参照すべき文献などありますか」と質問したら良いと思います。)

 

疾患に対する知識は数年単位でどんどんアップデートされるので、「たくさんの知識を持っている」ことよりも、「分からないことを分からないと認識して、的確な情報源を検索できる」事の方が重要です。

ここでも自分の頭で考えることが重要で、「指導医が言ってたから」「〇〇科目の先生が言っていたから」ということだけで、済ませては実力は身につかないと思います。

 

項目としては、何科に行くにしても、輸液・感染症・コモンディジーズの対応などは2年間で勉強しておいたほうが良いとは思います。

 

内科レジデントの鉄則 第2版

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長々、書きましたが、新しく研修医になる先生方の人生が良きものになればと思います。春休み楽しんでください。

 

それでは。