【勉強会メモ】第2回JSEPTIC-CTG 「Journal clubをやってみよう!RCT編」に参加してきました
こんにちは。今回から、参加した勉強会の内容について自分の復習がてらまとめていきたいと思います。
2017年12月9日、JSEPTIC-CTG主催の勉強会に行ってきました。
内容としてはタイトルの通りで、「RCTの批判的吟味」を、あらかじめ出されたお題(今回は2017年JAMA誌に掲載された、低血圧を伴う敗血症患者の蘇生プロトコールに対する研究)について読んだ状態で、当日講義とグループワークを繰り返すというものでした。
集中治療医の先生が中心でしたが、総合内科系の先生もいらっしゃいました。
老若男女、若手ベテラン入り混じってのグループワークで楽しかったです。
JSEPTIC-CTGそのものが、集中治療域における臨床研究を推進しようとするグループと言うこともあって、実際の講義や配布資料ではかなり細かくRCTの読み方について述べられていました。(自分自身、最近感じることですが、臨床研究をするということは先行研究を分析する作業が必要ですので、当然論文読解も緻密に行わなければいけません)
今回は、
1.全体を通してのポイント
2.RCTの読み方のポイント(講義から抜粋)
3.講義を踏まえての感想
の順に記載したいと思います。
1.全体を通してのポイント
・臨床研究は交絡とバイアスとの闘い
・Methodsを細かく読むことでどれくらい交絡とバイアスが取り除けているか吟味する
・Journal Clubは「論文を批判的に吟味して日々の臨床に適用する」ことを目的としている。
・RCTの場合はCONSORT2010に基づいて作成される
・RCTは対象者が限定されすぎている場合、患者にとっての有用性が低い場合、研究デザインに不備がある場合(とくに脱落が多い場合)は結果が弱まる
2.RCTの読み方のポイント(講義から抜粋)
①Introductionを読む
・なぜこの研究をやったか?を読み取る。
→今まで分かっていること、分かっていないことの2点を踏まえた上で(この2つの差をKnowledge gapと呼ぶ)、この研究の目的と仮説を述べている部分を読み取る。
・この研究は誰にとっての研究かを読み取る。
→患者?医療者?行政?経営者?政府?(=Relevant?)
②Methodsを読む(ここがキモ!)
・論文のPICOを確認する
P→RCTは母集団からサンプルを抽出して解析するので、実際に研究した人々がもともとの仮説の母集団を反映しているのかが大事(例えば、そもそもアフリカの低血圧を伴う敗血症患者を対象としたつもりが、ザンビアの単施設の数百人というのが良いPatientかというのは注意が必要)。
I/C→適切な比較になっているか、客観的な比較か、介入は現実的か、それ以外の治療介入はどうなっているか(appendixなど参照しないと分からない)
O→Outcomeにもたくさん種類がある。今回の場合はPrimary outcomeが死亡率というhard outcome(客観的なoutcome、対義語はsoft outcome)かつsingle outcomeなので評価しやすい。
※論文の結果を仮説に応用できるかどうかを「外的妥当性」、論文がバイアスや交絡を十分にとりのぞけているかを「内的妥当性」と言う。
・デザインを確認する
→RCTは交絡の調整はできる(つまり内的妥当性は高い)が、PICOが厳密に決まるので外的妥当性が低い場合があるので注意する。
→ランダム化、コンシールメント(割付の過程が伏せられているかどうか)、マスキングがされているかどうかを確認する。マスキングは患者、介入者、データ観察者、アウトカム解析者、データ解析者の誰にされているかまで確認する。
・統計解析を確認する
→色々あるけど最大のポイントは「サンプルサイズの計算が妥当かどうか」。
αエラーとβエラーをどの程度に想定し(それぞれ5%、10-20%程度が妥当)、あらかじめイベント発生率をどのように見積もっているのか、そして実際の非介入群での結果はどのようになっているのかを確認する。(例えば今回はサンプルサイズを決める段階で、先行研究を参考にし、60%の死亡率を予想していたが、実際には非介入群では30%だった。解析した結果有意差がなければ、「本当に有意差がないのか」それとも「サンプルサイズの決定が間違っていたのか」分からない)
※αエラーは「実際には差がないものを差があると言ってしまうこと」、βエラーは「実際には差があるものを差がないと言ってしまうこと」
→解析はITT解析が最も理想的ではあるが、おおくはmITT解析となっていることが多い(mITTの定義は曖昧なので、実際どんな解析になっているかは注意)
※ITT解析はIntention to treat解析のことで、ランダマイズされたデータすべてを解析対象にすること。すべてを解析対象として、しかも割り付けられた群として解析することで、RCTの最大の強みである内的妥当性を担保しようという意味がある。
③Resultsを読む
・結果の信用性を確認する
→RCTの場合、脱落が多いものには注意が必要。プロトコールの離脱率やアドヒアランスを確認する(脱落の目安としては20%未満が理想)
・どんな患者に適用できるのかを確認する
・効果だけではなく治療のAdverse Eventについても確認する
・結果のRR、RRR、RD、ARR、NNTを計算する
※http://www.igaku-shoin.co.jp/nwsppr/n1997dir/n2248dir/n2248_11.htmなど参照。
④Discussionを読む
・①~③ができていれば流し読みでも良い。
→基本的には筆者の意見のまとめ、妥当性に対する主張、結果と既存研究との比較、だれにとって有用であると筆者が考えているか(implication)、研究のlimitationについて述べられている。
3.講義を踏まえての感想
参加された皆さん、講師陣ともにレベルが高くて勉強になりました。自施設以外の先生と触れ合うと毎度「世の中広いな」と痛感します。
RCTの読み方もブラッシュアップされたと思いますし、EBMやJournal clubというものと、日常の診療に関してより具体的に考えるきっかけになりました。
どういうことかと言うと、「論文を批判的に吟味すること」「知識のブラッシュアップをすること」「日常臨床の意思決定に文献を用いること」の3つのバランスは常に考えなきゃいけないなということです。
「論文を批判的に吟味すること」は臨床研究を行ったり、日々のプラクティスを大きく変える際には必要になりますが、時間がかかります。可能な限り行うべきだと思いますが、時間がいくらあっても足りないので、ある程度対象となる文研の取捨選択はひつようになるでしょう。(そういう意味でも、批判的吟味の能力そのものは高く持っていたほうが良さそうです)
「知識のブラッシュアップをする」場合には、いわゆるReviewや、成書、ガイドラインなどの二次文献を活用したほうが効率が良さそうです。自分の研鑽のためにこういった文献にあたる習慣をどのように身に着けていくかは自分自身にとっても課題です。
「日常臨床の意思決定に文献を用いること」については、Up to dateのような効率の良い二次資料を用いることが必要になりますが、おそらくこれだけだと、知識の自転車操業と言うかその日ぐらしになってしまうので、前述した「論文の批判的吟味」や「知識のブラッシュアップ」も欠かせません。
医師に(そして仕事だけに)限りませんが、「今現在自分が何のために時間を使っていて、それが効率の良いことなのか」と言うのは常々意識しないといけませんね。
長くなりましたが、以上です。
それでは。