アドレナリンとβblocker、抗精神病薬など(グルカゴン、アドレナリン作用の反転)
こんにちは。
先日β blocker内服中の患者さんがアナフィラキシーショックになり血圧が上がらず苦戦した例があったので簡単にまとめます。
実はこれ、救急あるあるなのですが、『β blocker内服中はアドレナリン作用が減弱する』『α blocker内服中はアドレナリンを使用すると血圧が下がる』と言ったことは知っておく必要があります。
今回は
1.そもそものアドレナリンの作用機序
2.アドレナリンの禁忌
3.併用禁忌(注意)薬を内服してる患者がアナフィラキシーショックになったら
という章立てでお話ししたいと思います。
1.そもそものアドレナリンの作用機序
アドレナリンは昇圧薬もしくは気管支拡張薬として心停止、アナフィラキシーショック、気管支喘息に用いられます。
これはアドレナリンの持つα作用、β1作用、β2作用が下記のようにな効果を持つためです。
α1作用…血管収縮、散瞳 → 昇圧!
β1作用…強心作用 → 昇圧!
β2作用…血管・気管支平滑筋弛緩
後々ポイントになりますが、β2作用には血管弛緩作用があるので血圧は下がる方向に働きます。
ただし、アドレナリンの場合は、α1作用がβ2作用を大きく上回るので結果的には昇圧されるわけですね。
2.アドレナリンの禁忌
アドレナリンの禁忌及び投与注意は下記のとおりです。(1.より引用・一部追記)
●禁忌
●原則禁忌
・アドレナリンに対する過敏症
・頻脈を伴う不整脈
・脳出血の既往
・甲状腺機能亢進症
・コカイン中毒
●投与注意
・血流障害の疾患がある症例
・妊婦
・β blocker投与中
ここで言う「アドレナリンの昇圧作用の反転」と言うのは、抗精神病薬で実際に確かめられていることではありません。ただし、添付文書には記載があり、注意が必要なわけです。
α blocker作用のある薬剤を内服している最中に、アドレナリンを投与するとβ作用が前面に出ることになります。この場合「気管支拡張作用は保たれるが、血圧はむしろ下がる」ことが想定されます(前述したように、β2作用が前面に出るため)ので、注意が必要です。
3.併用禁忌(注意)薬を内服してる患者がアナフィラキシーショックになったら
アナフィラキシーショックにも程度がありますが、今回は喉頭浮腫+血圧低下の両方が起きていると考えます。この場合は、β2作用と昇圧作用(β1+α作用)の両方が必要なわけです。
①β blocker内服中の患者さんがアナフィラキシーショックになったら
この場合は、アドレナリン投与をしてもβ作用が出づらいです。喉頭浮腫も改善しづらいし、昇圧もいまいちといった状況が考えられます。この場合は、「アドレナリン投与に加えてグルカゴンの投与(1-2㎎ 筋注 20分毎)」を検討します。
なぜグルカゴンが有効かと言うと、β受容体を介さずにcAMPの生成を促して、気管支拡張や強心作用を発揮するからです。(ちょっとβ blocker内服中の心源性ショックの時にミルリノンを使用する理屈に似ています)
②抗精神病薬内服中の患者さんがアナフィラキシーショックになったら
この場合は、アドレナリンの昇圧作用の反転、が問題になりますね。ただし、アナフィラキシーは致死的病態で、ガイドライン上も「アドレナリン投与がアナフィラキシーショックの治療の主軸である」(2.より引用)ことが記載されていますので、アドレナリンは使用します。
その際に、「血圧が下がるかもしれない」と認識しておくこと、カルテに診療の妥当性を記載しておくことが重要であると考えられます。
もしも血圧が下がった場合には、バソプレシンなどで昇圧するしかないのでしょうか(実際に経験がなく分かりませんが)
【参考文献】