心房細動についての話
今回は、よくある質問シリーズとして「病棟で心房細動の患者さんを見つけたらどうすれば良いのか」という話です。
今回のポイントは、
「心房細動は3つに分類される、初期対応にDCもしくは薬剤が必要になることもある、CHADSスコアを評価したうえで、抗凝固・アブレーションの治療が必要になることもある」
というところでしょうか。
以下を読み進める前に「心房細動は血栓が心臓の中にできる不整脈だ」ということをよく覚えておいてください。
■基礎知識 心房細動の診断と分類
まずはそもそも心房細動を正しく診断することが必要です。
後に述べますが、心房細動であれば抗凝固薬の内服など、患者さんの一生に関わるような決定を後々する必要が出てきます。モニターのみの判断ではなく、心電図を評価し、きちんと「心房細動」であることを診断しましょう。
心電図で、「P波が消失、RR間隔が不正、f波が見える」ことが確認されれば心房細動です。モニターのみで見ていると、意外とPACが多発しているだけだったりすることもありますので心電図で評価しないと診断を間違えてしまいます。
(https://j-depo.com/news/atrial-fibrillation.htmlより引用)
続けて、心房細動の分類に関してです。
以下は心房細動治療(薬物)ガイドライン2013改訂版(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf)からの引用ですが、心房細動は3つに分類されます。
入院して、初めて診断がついたばかりの心房細動は基本的には発作性心房細動ということになりますね。患者さんに以前から動悸や胸部不快がなかったか問診をしたり、左房の拡大がないかを確認することで、心房細動が以前からたびたびあったものか臨床的に推測することができます。
■初期対応 除細動とrate control
こちらも、上記のガイドラインからの引用です。
基本的には「心房細動により(頻脈になっていることにより)ショックになっているか」というのが初期対応の要です。
不安定な心房細動であれば電気的除細動が考慮されます。48時間以上心房細動が続いている場合には、抗凝固も検討しなくてはいけません。
もしも、循環動態が安定しており、頻脈であったり、動悸症状が強ければ、心機能や副伝導路の有無を評価したうえでrate controlが必要になります。
rate controlに関しては、どの程度の心拍数が良いか、症状との兼ね合いもありますが概ね100回/分前後が目標になることが多いです。
■抗凝固
冒頭に述べましたが、心房細動を見たら塞栓を防ぐことを考えなくてはいけません。
抗凝固の必要性に関しては、下記の通りCHADsスコアを利用して検討します。
上記のポイントは、弁膜症(特に僧帽弁狭窄症)が原因の心房細動の場合や人工弁の場合はワルファリンによる抗凝固が必要な点です。
CHADs1点以下の場合は下記のCHADs-VASCスコアも利用して、抗凝固の導入を考えます。
勿論、抗凝固の導入をする際には、出血のリスクも勘案しなくてはなりません。
その場合はHAS-BLEDスコアを使用します。
施設によっては、アブレーションによる心房細動治療を行っている施設があります。
下記のように適応の基準もありますが、実際には年齢や、患者希望なども含めて適応は判断されるので、アブレーションに積極的な施設の場合はコンサルトしても良いでしょう。
長くなりましたが、要点をまとめると
・心房細動は心電図で診断をすること、持続が7日間と除細動に対する反応で3つに分類されること
・除細動を行う場合は、血栓の有無に注意、特に持続が48時間を超える場合は塞栓症のリスクが高い
・rate controlの目安は100回/分程度
・CHADsを評価して抗凝固を行う
となります。
心房細動患者さんは非常に多く出会います。
自分が研修医のころは出会う度に困っていました。循環器の先生と的確に連携を取りながら対応したいものですね。
それではまた。
【参考文献】
1.日本循環器学会.心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).