救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の知識のまとめをしたり、論文や本を読んで感想文書いています。日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の実臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.Twitterもやっています(https://twitter.com/ryo31527)

BNPの話

最近、話題になったBNPの話です。

呼吸不全の患者さんでBNP値が高いから心不全だ、低いから心不全ではない、と実際の臨床ではやり取りがされることも多いと思います。本当のところ、どのような運用が良いのか気になったのでちょろっと調べてみました。

 

BNPとは

brain natriuretic peptideの略で、心室から分泌される利尿・血管作用のあるタンパクです。

 

特徴としては、

 

心室への負荷のより分泌されるので、左室拡張末期圧をよく反映する

心不全の存在診断・重症度診断・予後評価いずれにも有用

・慢性心不全の治療効果の指標として有用(再入院↓、死亡率→、200-250pg/㎖が退院のメルクマールになる)

心不全以外にも腎機能障害、心筋梗塞でも上昇する

・逆に、収縮性心膜炎、MS、高度肥満などではBNPは過小評価される

・お値段は140点 心不全の診断・病態の把握のために月1回まで算定

 

■感度・特異度

Dynamedでは下記のような記載になっています。

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■実際どのように用いるか

日循の慢性心不全ガイドライン(2010)では、下記のような心不全の診断フローチャートが作成されています。

 

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これを文面通り受け取ると、BNP>100pg/mlなら心エコー、BNP>200pg/mlなら(他の検査結果と合わせて)心不全として治療を行うということになります。

日本心不全学会のホームページでは以下のような推奨になっています。

 

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このように見てみると、急性心不全の診断、慢性心不全の治療指標などに有用そうですね。ただ、BNP値に対して、心臓超音波の敷居が低いようにも感じます。

確かに低侵襲な検査ではありますが、全体の費用や時間のコストを考えると、「臨床的に必要な場合のみ測定する」という原理に基づいてのオーダーが大事そうですね。

 

それではまた。

 

【参考文献】

1.日本循環器学会.慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).p.11-

2.日本心不全学会ホームページ