救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の知識のまとめをしたり、論文や本を読んで感想文書いています。日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の実臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.Twitterもやっています(https://twitter.com/ryo31527)

救急集中治療領域で使用する 鎮静薬の比較

今回は、研修医の先生から質問の多い、鎮静薬についてのまとめです。

集中治療領域で主に用いられる「鎮静」薬をそれぞれ比較しながら使用するとよいと思います。

 

プロポフォールミダゾラム、デクスメデトミジンの3つがしばしば用いられます。

 

プロポフォール(ディプリバン®)

特徴は「素早く効いて、素早く切れる。だけど血圧と呼吸はストンと落ちる

循環動態が安定している患者さんの処置や鎮静には使用しやすいですが、ショックや重症な外傷、高齢者には呼吸抑制、循環抑制の点から使用しづらいです。

 

用法用量は、状況によって様々ですが、概ね

0.2-2㎎/㎏で導入、0.3-3㎎/㎏/hrで維持

で用いられます。(導入の際にボーラスではなく、0.3㎎/㎏/hrから初めて5分ごとに0.3㎎/㎏/hr増量していく方法もDynamedでは紹介されています)

 

注意点としては、1㎖=1.1kalであること、脂肪製剤なので12時間毎にルートを交換すること、感染に注意すること、プロポフォール注入症候群、があります。(製薬会社のHPでは、中心静脈からの投与も可能と記載はありますが、基本的には避けたほうがよさそうです。)

プロポフォール注入症候群は4㎎/㎏/hrの用量で、48時間使用するとリスクが増えます。原因不明の代謝性アシドーシス・横紋筋融解を来す疾患で、予後が悪いと言われていますので用法用量には注意が必要です。

 

 

ミダゾラム(®)

特徴は「プロポフォールに比較して、血圧は下がりにくいが、効果が遷延する

循環動態が不安定な患者さんの鎮静に用いることがしばしばですが、長期間使用すればするほど、効果が遷延します。

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日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不 穏・せん妄管理のための臨床ガイドラインにおいては、上記のような記載があり(ミダゾラムに限ったことではありませんが)鎮静を定期的に中断するなどの工夫も必要になります。

 

用法用量は0.03㎎/㎏でローディング、0.02-0.18㎎/㎏/hrで維持

で用いられます。

 

注意点としては、投与してから効果が出るまでに2-5分という時間がかかることです。実際に処置前に2分待つのは現場だとかなり意識しないと難しいです。

また拮抗薬のフルマゼニル(アネキセート®)を用いる場合、フルマゼニルの効果が30-60分と短いため、一度覚醒した後に再鎮静されること、長期間ベンゾジアゼピン内服しているケース(薬物中毒など)では痙攣発作を起こすことがあります。

 

■デクスメデトミジン(プレセデックス®)

この薬剤に関しては敢えて注意点を先に記載します。

フラッシュしない!徐脈に注意!」です。先の2剤と違い、フラッシュしてはいけない薬剤であるということは知っておいたほうが良いでしょう。臨床的には、徐脈が強く出る患者さんもいますので、使用する前はあらかじめ脈拍数は確認する必要があります。

 

特徴としては「ある程度の鎮痛作用も伴う、自発呼吸を温存できる」の2点があります。

 

用法用量は0.2-0.7μg/㎏/hr(ガンマではないことに注意が必要です。)です。

製薬会社のHPに換算表があるので体重を確認して使用しましょう。

添付文書ではローディングの記載がありますが、実際には臨床の諸先輩方はローディングは避けて使用していることが多いようです(循環抑制が出やすいため)

 

↓↓↓

 

http://www.maruishi-pharm.co.jp/med2/files/anesth/support/92/sup.pdf?1483664997

(丸石製薬株式会社「プレセデックス適正使用ガイド」)

 

 

 

【参考文献】

1.大野博司.ICU/CCUの薬の考え方,使い方.2016年1月5日.p.56-.中外医学社

2.布宮伸.日本版・集中治療室における成人重症患者に対する痛み・不 穏・せん妄管理のための臨床ガイドライン.日集中医誌 2014;21:539-579.