救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の日常臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.

輸液や栄養に関する基本

今回は,日常臨床で行う輸液/栄養療法に関してシンプルにまとめてみました.

語り始めるときりがない分野(栄養開始のタイミングとか,どういうセッティングでどこまでカロリー目標を達成するかと,嚥下の問題とか)でありますので今回は基本的な部分のみまとめています.

 

<基礎知識>

3大栄養素と言うと,糖質・脂質・タンパク質があります.(これに,ビタミンとミネラルを加えて5大栄養素とも言います)

一般論として, 総カロリーの50−60%が糖質,15−20%がタンパク質 20−30%が脂質でまかなわれるのが理想です.(脂質は1g=9kcal,糖質とタンパク質は1g=4kcal

実際には,タンパク質は外傷や熱傷では多めに必要かもしれませんが,エビデンスには乏しいです.

 

<栄養状態の評価>

BMIやTSF(上腕の肩先から肘先までの中間点の皮下脂肪の厚さ)などの身体所見から評価します.

血液データでは,アルブミン・トランスフェリン・プレアルブミン・総リンパ球数などで評価します.

 

<プランニング>

大原則は,経腸栄養>静脈栄養であること!(安易な禁飲食は避けること.)

一般的には,1週間程度であれば末梢静脈栄養でも良いとされていますが,救急集中治療領域に置いては胃管を入れて,少量でも経腸栄養を開始するのがトレンドです.

腸管が使用できない期間が2週間を越える様な場合は中心静脈栄養を考慮します.

(感染の合併を考えるとCVよりはPICCの方がその場合は望ましいです)

 

栄養や輸液はまず,カロリー・水分量・Na量・K量から考えると考えやすいです.輸液のみで禁飲食とする場合にはビタミンも忘れずに!

カロリー:25kg/kcal

水分:30−40ml/kg

Na:1−2meq/kg/day

K:1meq/kg/day

が目安になります.

 

実際には,製品化されている輸液製剤を使用することが多いと思いますので,その特徴を端的に整理します.

 

①維持液(ソルデム3A ®)…3−4本/日で水分,Na,Kはまかなえる.

 

②糖加維持液(フィジオ35®)…10%ブドウ糖液なので,カロリーが稼げる.

(10%以上の濃度を投与する場合は中心静脈が必要)

 

③低濃度糖加アミノ酸輸液…大体7.5%ブドウ糖(140kcal)+3%アミノ酸(60kcal),アミノ酸が投与できるのが長期投与では重要.

 

VitB1が含まれていないもの アミノフリード®,ツインパル®

VitB1が含まれているもの ビーフリード®,アミグランド®

 

④脂肪乳剤…添加物も考えると,10%脂肪乳剤は1kcal/ml, 20%製剤は2kcal/mlとなる.投与速度が速いと脂肪塞栓の原因にもなるので,投与速度は0.1g/kg/hr(最大投与量は0.3g−1g/kg/日) →イントラリポス®20%100mlとすると,体重50kgなら25ml/hr以下が望ましい.

末梢から単独投与が推奨されており,感染の原因にもなるので24時間でルートは交換する.

 

⑤中心静脈栄養液…高カロリー輸液, 糖質・電解質アミノ酸・ビタミン・微量元素の合剤.NPC/N比(※1)は150程度になっている.

例として,エルネオパ®で考えると,

1号液は1000mlあたりブドウ糖120g Na50 K22 アミノ酸20gで560kcal

2号液は1000mlあたりブドウ糖175g Na50 K27 アミノ酸30gで820kcal

 

腎不全などの特殊な病態では「基本液」「アミノ酸液」「ビタミン剤」「ミネラル」を組み合わせてオーダーメイドをする必要があります.

 

(※)NPC/N比

そもそも栄養素のうち,アミノ酸はタンパク質合成に使用したいものなので,基本的な考え方として,「投与されるアミノ酸以外に,しっかりエネルギーを投与したい」という考えがあります.

そこで,

NPC=糖質×4(g)+脂質×9(g)

N=タンパク質(g)÷6.25(窒素係数) として,NPC/N比を計算します.

通常では150−200が理想とされますが,窒素負荷を抑えたい腎不全患者では300−500(透析導入患者は別),重症患者や外傷・熱傷では100-150が理想とされます.

 

基本的な数字を最初に覚えてしまうと,病棟でルーチンで行われている輸液療法の根拠が分かってすっきりすると思います.(多くのベテランドクターは,「維持液4本で」のように,自分の慣れた処方を無意識に出しています.)

 

 

それではまた.