代謝性アルカローシスの話
本日は病棟ではよく見るけれど、なかなか理解の進まない「代謝性アルカローシス」の話です。
代謝性アルカローシスの理解をするうえで、
1、腎臓における重炭酸イオン調節の(簡単な)生理学
2、代表的な代謝性アルカローシスの原因とその病態生理
3、実際にどのように診断と治療に取り組めばよいのか?(尿中クロールを利用する)
の順番に考えてみると理解がしやすいと思います。
ある程度、勉強されている方だと、尿中Clで分類するというのはご存知かと思いますが、病態生理としてオーバーラップする部分も多く、尿中Clだけだとなかなか判断ができない場合もあるので、尿中Clはあくまでも治療方針の決定の際に参考にして頂ければと思います。
【腎臓におけるHCO3-調節の生理学】
重炭酸の再吸収は90%が近位尿細管で残りの10%が集合管で行われています。
集合管は普段、HCO3-を再吸収する際はHとHCO3-を交換してHCO3-を再吸収していますが、。血中の重炭酸イオンが多い状態になるとペンドリンと言う塩素重炭酸交換タンパクがCl-と交換して尿中にHCO3-を排出するようになります。
⇒Cl-とHCO3-(どっちも陰イオン)を交換してHCO3-を排泄しているのがポイントです。尿中にCl-があってなおかつペンドリンがきちんと働くことでHCO3-が排泄されるというのがポイントです。
【代表的な代謝性アルカローシスの原因とその病態生理】
当たり前だけど、重炭酸イオンをただ負荷するだけでは、一過性にアルカローシスにはなりますが、その状態が維持されることはありません。持続する場合、それなりの理由があるわけですね。
①塩素欠乏
これが最も多い、というか代謝性アルカローシスに対して強烈に作用する原因です。
塩素が足りなくなれば、当然遠位尿細管にたどり着くClは少なくなる。そうすると…
・尿細管へのCl-とH+の排泄が増える。H+の排泄が増えることでHCO3-の再吸収が増える
・Clが欠乏するとペンドリンの活性が落ちるので、HCO3-は排泄されなくなる
といったことが起きて、いつまで経っても代謝性アルカローシスが改善しなくなります。
②K欠乏(Mg欠乏)
K+とH+は互いを補い合うような挙動を示すのは皆さんご存知かと思います。
なので、K+が減る ⇒ その分細胞内からKがシフト、その代わり細胞内にH+が取り込まれる⇒H+が相対的に減るため代謝性アルカローシスになります。
Mgは、日本の場合、イオン化Mgが測定できないので採血でMgが正常値でも欠乏している場合があります。
③ミネラルコルチコイド過剰
代表的なミネラルコルチコイドはアルドステロンですね。
アルドステロンが、遠位ネフロンでのHCO3-再吸収を促進することで起こります。
※アルドステロンは、Naの再吸収とKの排泄を行い、血圧上昇および低K血症を引き起こす。ちなみに、脱水になることで腎血流が減るとRAAが賦活化されるので、結果的にアルドステロン分泌が亢進するため代謝性アルカローシスとなります。
④胃酸の喪失
胃酸はHとCl、少々のKが含まれているので、これが失われると、塩素欠乏・低K血症・H+の喪失を起こすため代謝性アルカローシスとなります。①と②の合わせ技ですね。
⑤利尿薬
ループ利尿薬は尿中にNa,K,Clを排泄するので代謝性アルカローシスの原因になります。
利尿薬投与による代謝性アルカローシスの難しいところは、「Cl-欠乏を伴っているかもしれない(そうではないかもしれない。そして尿中Clだけでは判断できない)」ので、利尿薬投与が代謝性アルカローシスの原因となっている場合、K+だけでなく、Cl-補充が必要になる場合があります。
⑥大量輸血や重炭酸ナトリウムの投与
もちろん一過性の代謝性アルカローシスの原因になりますが、腎臓からの排泄が保たれていれば徐々に改善します。
【実際にどのように診断と治療に取り組めばよいのか?】
患者の置かれている状況からある程度、原因を推測したうえで尿中Clを測定します。
全ての検査においてそうですが、検査前確率をある程度見積もってから尿中Clを提出しなければ、正しい診断が難しくなります。
尿中Clが20未満に低下していれば、Cl反応性の代謝性アルカローシス(つまり塩素欠乏がある)なので、生理食塩水の投与や、塩化カリウム・マグネシウムの補充を行います。尿中Clが20を超えていれば、Cl抵抗性の代謝性アルカローシスなので、
アルドステロン症、Barter症候群、(利尿薬)、Cushing(ステロイド使用)、MgやKの欠乏を鑑別に挙げ、アセタゾラミドの投与も考慮します。
本日は以上です。
【参考文献】
ちなみに、参考図書などに関する質問も結構受けるのでお勧めのものを紹介しておきます。
↑研修医の先生やJNPさん向けです。ビジュアル的に見やすくて、なおかつ程よくマニアックな部分は省いてありますので苦手意識がある人向け、もしくは最低限以上のことは勉強したくない人向けです。
↑少し古い本ですが、かなり詳しく書いてあります。研修医の頃から繰り返し読んでますがなかなかすべてを理解できません。上級者向けだと思います。いつになっても新しい発見がある本です。
【1人抄読会】分娩後の大量出血にトラネキサム酸が有効
今回は、少し前にLancetで発表された
“Effect of early tranexamic acid administration on mortality, hysterectomy, and other morbidities in women with post-partum haemorrhage (WOMAN): an international, randomised, double-blind, placebo-controlled trial”
を取り上げます。
論文の要旨としては、
『分娩後の大量出血にトラネキサム酸1g(30分後に出血が持続していたり、24時間以内に再出血した場合にはもう1g追加投与)をすると死亡率が減る(NNT=250)』
と言ったものです。通称WOMAN trialですね。
まず、論文そのものを読む前に、簡単に分娩後大量出血について整理します。
産科危機的出血への対応ガイドラインを参照してみると、
文献によってまちまちですが、一般的には経膣分娩では出血量は500-800㎖程度が平均的な量のようです。
分娩後大量出血の対応としては下記のようなフローチャートが作成されています。
ショックインデックスが採用されています。
分娩前にリスク評価し、リスクが高い場合は高次施設での分娩が推奨されています。
独自のDICスコアが導入されているのも特徴ですね。
トラネキサム酸については特に言及されていません。
実際に、WOMAN trialについて見てみると…
【Summury】
分娩後出血は周産期死亡の大きな原因である。
外傷ではトラネキサム酸投与が死亡率を改善することがすでに示されている(CRASH2 trial)が、分娩後出血に有効であるかどうかを確かめたい。
二重盲検RCTでトラネキサム酸vsプラセボの試験。
経膣および帝王切開で出産され、分娩後の出血が問題になった女性を対象にしている
(193病院、21ヵ国、2010年3月-2016年4月までで20060人の女性が参加している)
1gのトラネキサム酸かプラセボを投与した後に、30分後も出血が続いている場合、もしくは24時間以内に再出血した場合に1gを投与する。
トラネキサム酸群とプラセボを比較したときに死亡率は有意差(1.5%vs1.9% P=0.045 RR0.81)があったが、子宮摘出術の頻度に差はなく、有害事象もとくになかった。3時間以内に投与された群で成績が良かった。
【Introduction】
CRASH2trial(外傷に対する早期トラネキサム酸投与が死亡率軽減に有効であるということを示したRCT)を参考にしている。今までにこのテーマでRCTが行われたことはない。WHOのガイドラインのトラネキサム酸投与を支持する結果となった。
出産後500㎖以上の出血を分娩後出血と定義した。
年間10万人の妊産婦が産後出血で死亡しており、その99%が貧困国でのもの。
【Methods】
・倫理的には特に問題なし
・RCT 二重盲検
・プラセボは生理食塩水
・臨床的に経膣で500㎖、帝王切開で1000㎖の出血があれば産後出血と判断
・1gのトラネキサム酸を(100㎎/㎖製剤)を1㎖/minで投与(およそ10分)
30分後も続いてたり、24時間後の再出血したら1g追加
・Primary Endpointはランダム化されてから42日間のあらゆる死亡
・Secondary outcomeは死因別死亡率、塞栓イベント、外科的介入、臓器障害の合併、その他有害事象
・統計的には当初は15000人で90%の検出力を確保する予定だったが、実際には子宮摘出は産後すぐに判断される(ランダム化と同時に行われる)ことが多かったので20000人まで参加者を増やした
・患者背景ごとにも解析(産後からランダム化までの時間、経膣か帝王切開か、出血の原因は何か)
・ITT解析
【Results】
・出血による死亡が72%
・出血による死亡が最も如実に有意差がついた
・塞栓や臓器障害、敗血症などによる死亡は変わらず
・3時間を超えてトラネキサム酸が投与された群では死亡率の低下はなかった
・子宮摘出術はランダム化されてから24時間以内に全体の86%に対し行われていた
・トラネキサム酸は子宮摘出の頻度は減らさなかった
・1080名の死亡があったが、そのうち371(34%)は子宮摘出を行わずに死亡し、112名(10%)は子宮摘出後に死亡し、597名(55%)は子宮摘出後に生存していた。
【Discussion】
①追跡率も良いのでbiasはかかりづらいだろう
②サンプルサイズの変化があった
③出血以外の死亡率も減らすのかさらなる試験も必要になる
④止血のための開腹術は主に、再開腹で行われていて、これはトラネキサム酸が奏功して頻度が減ったんだろう
⑤CRASHでも明らかだったが、3時間以上たつとトラネキサム酸の効果は失われる
⑥本試験では経静脈的なトラネキサム酸投与が用いられたが貧困国では家とか点滴のないとこでの出産による死亡が問題になっている
【私見】
かなり大きなStudyで、有意差はつきましたがNNTは250(計算あってるでしょうか?)と、ちょっと大きめのようです。CRASH2は119。
日本の妊産婦死亡率は2015年のデータでは10万人当たり3.8人(厚生労働省ホームページ参照http://www.mhlw.go.jp/toukei/youran/indexyk_2_1.html)と低い数値を保っていますので、トラネキサム酸が生死を分かつ場面は稀かもしれません。
ですが、有害事象がないということで体勢に影響を与える可能性はないものの、使用はしても良いかもしれませんね。
【参考文献】
1.Shakur, H., Roberts, I., Fawole, B., Chaudhri, R., El-Sheikh(2017).
Effect of early tranexamic acid administration on mortality, hysterectomy,
and other morbidities in women with post-partum haemorrhage (WOMAN):
an international, randomised, double-blind, placebo-controlled trial. The
Lancet, 389(10084), 2105–2116.
2.参加危機的出血への対応ガイドライン
(https://www.jspnm.com/topics/data/topics100414.pdf)
3.厚生労働省ホームページ
【1人抄読会】急性冠症候群患者においてTroponinT測定できるときはCK-MBは測定不要?
今回から趣向を変えて、気になった論文にも考察を加えていこうと思います。
本日読んだ文献は2017年8月にJAMAのSpecial communicationに掲載されたEliminating Creatine Kinase–Myocardial Band Testing in Suspected ACS | Acute Coronary Syndromes | JAMA Internal Medicine | The JAMA Networkdです。(無料アカウントを作成すると全文読めます。)
文献全体の要旨を一言でいうと、
「トロポニンTが測定できるシチュエーションであれば、CK-MBは測定しないほうが良い(コストもかかるし、診断を惑わせるだけ)」
ということです。
自分の勤務している病院では、なんとなくですが、
・CKがピークアウトするまでは逸脱酵素はフォロー
・ERでTroponinTとCK-MBは同時測定
といったことを行っています。
ちなみに、NSTEMIにおける心筋バイオマーカーの日本での推奨は下記の通りで、日本語の解釈としては同時に測定も許されそうです。生化学的マーカーの再検査は推奨されていますが頻度については記載なし。
STEMIに関しては、少なくともこのガイドラインが作成された時点では、TroponinTによる梗塞サイズの推定は積極的には推奨はされていないんですね。
72時間値の測定でも良さそうですけど、ただピーク値って何回も取らないと上手く測定できないような…。
ちなみにTroponinTは120点、CK-MBは90点で、いずれも月1回の算定が基本のようです。
以上を踏まえると、確かにTroponiTとCK-MBを同時に測定する意義はなさそうです。
ただし、自分は救急科の医師なので、コンサルトする循環器の先生方に「お金も無駄になるから、トロポニン取るならCK-MB要らないよ」と言われない限りは、オーダーはし続けるような気もします…。
日本版ガイドラインが改訂されるの待ちでしょうか。
うーん、難しい。
【参考文献】
1. Alvin, M. D., Jaffe, A. S., Ziegelstein, R. C., Trost, J. C., BJ, W., & MJ, T.
Eliminating Creatine Kinase–Myocardial Band Testing in Suspected Acute Coronary
Syndrome. JAMA Internal Medicine, 4(1), 38.
甲状腺機能低下や粘液水腫性昏睡の話
肝損傷に関して
今日は、肝損傷に関するまとめです。
以前脾損傷のまとめを作成しましたが、今回は鈍的腹部外傷の中で最も頻度の高い肝損傷についてです。
ポイントとしては、いつも通り肝損傷の分類、治療、合併症の順に整理していきたいと思います。
■肝損傷の分類
日本外傷学会の臓器損傷分類2008とAAST(The American Association for the Surgery of Trauma)の分類があります。脾損傷の時と同じですね。
(日本外傷学会分類2008より引用)
(Injury Scoring Scales - The American Association for the Surgery of Trauma
↑AASTのinjury scalingはこちらから確認できます。)
AASTの分類に関しては、AASTⅠ~ⅢのNOM非完遂率は3~7.5%、Ⅳで14%、Ⅴで23%とgradeⅣを境にNOMの非完遂率が下がりますので、裂傷の深さが肝葉の25%超えてくると重症度が上がる印象ですね。
■治療
損傷形態とvitalが必ずしも一致しないことは臨床でも頻繁に経験します。
治療方針の決定に関しても、JETECやIVR学会の推奨でも同様ですが、
『循環動態が不安定ならダメージコントロール手術、安定していればTAEもしくは保存』が原則となっています。
損傷形態がそれなりに高度でも、NOMの完遂率が高いのでTAEに行きがちではありますが、実際には循環動態がどれくらい安定しているかが重要です。
勿論,ほかの外傷の合併も重要です。
(※北里大学の樫見先生方の文献から図表をお借りしています(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/32/7/32_1163/_pdf))
■合併症
①胆管損傷
急性期は出血以外には胆管損傷に伴う胆汁漏の有無が治療上大きなポイントになります。胆汁漏があれば、腹膜炎・胆汁腫に進展する可能性もあります。ただし、あくまでも急性期のマネジメントの主役は出血の制御です。
止血が得られてから胆管損傷の治療に着手します。
胆管損傷の評価に関しては、 DICCTや胆管シンチを考慮します。(胆汁腫についてはエコーでも評価できると思われます)
②短絡路形成
動静脈瘻・動脈門脈瘻、Hemobilia(胆管と動脈の瘻孔)、Bilhemia(胆管と静脈の瘻孔形成)
③肝壊死・肝膿瘍
それぞれの治療に関しては詳細は割愛しますが、出血以外にも合併症の種類が脾損傷に比べると多いですね。
■安静度
遅発性出血はおよそ3%程度で、多くは72時間以内に出現します。
安静期間に関しても一定の見解はなさそうです。
今回は脾損傷と比較しながら、肝損傷についてまとめてみました。
それでは。
【参考文献】
1.日本外傷学会.外傷専門診療ガイドライン.2014年7月2日.p.80-.ヘルス出版.
他.
心房細動についての話
今回は、よくある質問シリーズとして「病棟で心房細動の患者さんを見つけたらどうすれば良いのか」という話です。
今回のポイントは、
「心房細動は3つに分類される、初期対応にDCもしくは薬剤が必要になることもある、CHADSスコアを評価したうえで、抗凝固・アブレーションの治療が必要になることもある」
というところでしょうか。
以下を読み進める前に「心房細動は血栓が心臓の中にできる不整脈だ」ということをよく覚えておいてください。
■基礎知識 心房細動の診断と分類
まずはそもそも心房細動を正しく診断することが必要です。
後に述べますが、心房細動であれば抗凝固薬の内服など、患者さんの一生に関わるような決定を後々する必要が出てきます。モニターのみの判断ではなく、心電図を評価し、きちんと「心房細動」であることを診断しましょう。
心電図で、「P波が消失、RR間隔が不正、f波が見える」ことが確認されれば心房細動です。モニターのみで見ていると、意外とPACが多発しているだけだったりすることもありますので心電図で評価しないと診断を間違えてしまいます。
(https://j-depo.com/news/atrial-fibrillation.htmlより引用)
続けて、心房細動の分類に関してです。
以下は心房細動治療(薬物)ガイドライン2013改訂版(http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2013_inoue_h.pdf)からの引用ですが、心房細動は3つに分類されます。
入院して、初めて診断がついたばかりの心房細動は基本的には発作性心房細動ということになりますね。患者さんに以前から動悸や胸部不快がなかったか問診をしたり、左房の拡大がないかを確認することで、心房細動が以前からたびたびあったものか臨床的に推測することができます。
■初期対応 除細動とrate control
こちらも、上記のガイドラインからの引用です。
基本的には「心房細動により(頻脈になっていることにより)ショックになっているか」というのが初期対応の要です。
不安定な心房細動であれば電気的除細動が考慮されます。48時間以上心房細動が続いている場合には、抗凝固も検討しなくてはいけません。
もしも、循環動態が安定しており、頻脈であったり、動悸症状が強ければ、心機能や副伝導路の有無を評価したうえでrate controlが必要になります。
rate controlに関しては、どの程度の心拍数が良いか、症状との兼ね合いもありますが概ね100回/分前後が目標になることが多いです。
■抗凝固
冒頭に述べましたが、心房細動を見たら塞栓を防ぐことを考えなくてはいけません。
抗凝固の必要性に関しては、下記の通りCHADsスコアを利用して検討します。
上記のポイントは、弁膜症(特に僧帽弁狭窄症)が原因の心房細動の場合や人工弁の場合はワルファリンによる抗凝固が必要な点です。
CHADs1点以下の場合は下記のCHADs-VASCスコアも利用して、抗凝固の導入を考えます。
勿論、抗凝固の導入をする際には、出血のリスクも勘案しなくてはなりません。
その場合はHAS-BLEDスコアを使用します。
施設によっては、アブレーションによる心房細動治療を行っている施設があります。
下記のように適応の基準もありますが、実際には年齢や、患者希望なども含めて適応は判断されるので、アブレーションに積極的な施設の場合はコンサルトしても良いでしょう。
長くなりましたが、要点をまとめると
・心房細動は心電図で診断をすること、持続が7日間と除細動に対する反応で3つに分類されること
・除細動を行う場合は、血栓の有無に注意、特に持続が48時間を超える場合は塞栓症のリスクが高い
・rate controlの目安は100回/分程度
・CHADsを評価して抗凝固を行う
となります。
心房細動患者さんは非常に多く出会います。
自分が研修医のころは出会う度に困っていました。循環器の先生と的確に連携を取りながら対応したいものですね。
それではまた。
【参考文献】
1.日本循環器学会.心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).
高K血症の初期対応とGI療法の実際
簡単なメモ書きです。
一般的に高K血症の初期対応として、カルチコール®の静注やGI療法など行われることが多いと思われますが、GI療法など割と慣習的にインスリン混注量を決めていたので、少し勉強してみました。
■高K血症の初期対応
以下は循環器系のガイドラインですが、高K血症に対する処方がよくまとまっていたので引用します。
(循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン ダイジェスト版より引用。http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2010_kasanuki_d.pdf)
ポイントは、細胞膜電位の安定化により致死的な不整脈を防ぐという意味でまず、カルチコール®1A(Ca3.9meq/10㎖)を緩徐に静注することです。
ちなみに、高K血症の心電図は、
①T波の増高
②P波の消失+narrow QRS(sinoventricular conduction)
③QRS時間の延長、房室ブロック
④サインカーブ様のQRS
⑤心室細動・心静止
のように変化していくので、narrow QRSでも、P波が消失している場合は要注意です。
T波の増高に関しては明確な定義はないようですが、QRS波高の1/2を超えると増高と捉える場合が多いようです。
■GI療法の実際
個人的には、院内製剤の採用の関係もあり、
40%ブドウ糖 40㎖にHur4単位混ぜたものをワンショット静注(ブドウ糖4gあたり1単位)することが多かったのですが、Up To Dateでは以下のような記載になっていました。
(Treatment and prevention of hyperkalemia in adultsIn: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on Sep 29, 2016.))
和訳してみると、
①50%ブドウ糖+50㎖に10-20Uの即効型インスリン をワンショット静注
②10%ブドウ糖500㎖に10Uの即効型インスリン を1時間で持続静注
③ただし、低血糖が75%に起こるので投与後1時間は血糖チェック
④低血糖を避ける意味では、10%ブドウ糖500㎖に10Uの即効型インスリン を8-10時間で投与。1時間おきに血糖測定。
⑤効果発現まで10-20分、持続時間は30-60分、Kはおよそ0.5-1.2meq/l低下
とのことです。前述の循環器のガイドラインとほぼ同じ内容ですね。ただ、低血糖の合併が結構多い印象でした。
たまに自分のルーティンワークの見直しもしていきたいと思います。
それでは。