救急医 ざわさんのブログ

東京の病院で三次救急をやっています.自分の日常診療の知識のまとめをしたり、論文や本を読んで感想文書いています。日常診療の延長でブログを始めました.ブログの内容の実臨床への応用に関しては責任を負いかねますので,各自の判断でお願いします.内容や記載に誤りや御意見がございましたらコメント頂ければと思います.Twitterもやっています(https://twitter.com/ryo31527)

低体温症の話

ご無沙汰しております。最近は(と言っても1年前ですが)臨床研究を始めました。

 

そちらが忙しかったこと、臨床研究を始める中で、従来の「論文の図表を貼る」「リンクを張る」などのやり方が、研究者としては良くないのだなというのを(今更でお恥ずかしいですが)痛感し、しばらく筆が止まっていました。

今後はその辺りも配慮してブログを書いていこうと思います。

 

今回は季節柄、低体温症の話です。

救急外来に患者さんが来た、「あれ?すごく冷たい」→「膀胱温を測ると30度!」なんてことは結構あるのではないでしょうか?

 

この場合のポイントは、「ひとまず暖めること(注意するポイント何点かアリ)」と「低体温に陥った原因を考える(場合によってはそちらの初期対応も必要)こと」を同時にすることです。

 

「道で倒れていたのだから、冷えてしまったんでしょ?」ではなくて、「何故、この人は道で倒れてしまったか」ということを考えなくてはいけません。

 

前置きが長くなりましたが、今日の内容は、

  1. 低体温症の重症度と初期対応

  2. 治療をする際の注意点

の2つです。

 

1. 低体温症の重症度と初期対応

低体温症の重症度と初期対応は以下のようにまとめられます[1]。

ここで言う体温は深部体温(core temperature、つまり膀胱温や直腸温、食道温など)であることに注意してください。

 

■32-35℃  → Mild hypothermia

PERが基本。

シバリングがあったり、栄養状態が悪そう、老人、脳血管障害の既往がある場合はAERも追加。1時間あたりの復温が0.5℃未満であればmoderate hypothermiaに準じた対応。

■28-32℃  → Moderate hypothermia

PER+AER ± 14-16Gの末梢静脈路から加温輸液。1時間当たりの復温が2℃未満であればsevere hypothermiaに準じた対応。

■28℃以下 → Severe hypothermia

循環動態が安定していたらPER+AER+AIR

循環動態が不安定であればECMOを用いた蘇生(=ECLS)

【治療法の具体的な内容】

・PER: passive external rewarming(受動的な体外復温)

→エアコンを28℃に設定、濡れた衣服の除去、毛布や布団をかける(家でも出来る)

・AER: active external rewarming(能動的な体外復温)

→電気毛布やベアハガー®の使用(※その場合、体幹を温めて、四肢は出しておくとafter drop(*1)を防げるかもしれないので推奨)

AIR: active internal rewarming(能動的な体内復温)

→40-42℃に加温した等張液を投与する、加温加湿した酸素を投与するを基本とする。場合によっては、血管内加温デバイス、温生食による胸腔・腹腔内洗浄(*2)、ECMO(理論上はVVECMOでもVAECMOでも良い、循環が不安定であればVAECMO)など。

特にUpToDate®では深堀りされていませんが、血液透析も有効なようです[2]。

(文献[2]ではQbを100-150㎖/min、Qdを500㎖/minで 数時間使用しているケースが多いようです)

 

*1 低体温症の症例は、全身の体表面を温めると末梢血管は拡張する。その時に末梢に停滞していた低温の血液が大循環に戻ることで深部体温が逆に下がる現象をafter dropと言う。末梢血管が拡張することで、相対的に循環血液量が減少し血圧が下がるとrewarming shockを起こすため、末梢を急に温めるのは良くないかもしれない。

*2 HFNCで加温すると、復温までの時間が有意に短くなったという報告もあったりするようです[3](※文献[3]はletterですが、HFNCを50-60l/minで、加温は37℃、FiO2は21%、5時間の間に加温生食は3L程度入る形で使用し、復温までの時間はHFNCで120 [120–165] 、HFNC無しで345 [218–405] 分であったとのこと。ただし、これはUp ToDateでは推奨はなく、Pubmedで探した限り規模の大きな観察研究やRCTはなかったので話半分の方が良さそうです

症例報告では胸腔洗浄や腹腔洗浄をやった例はあるようです[4]が、自分は経験がありません…。

 

2. 治療をする際の注意点

 

■低体温の原因を考える(重要‼)

→原因は多岐に渡るが、敗血症、副腎不全、甲状腺機能低下が主な原因。

同じ復温方法で比較したときに、低体温に感染症を合併している場合は加温がゆっくりだった(感染症アリだと0.67°C/hour、感染症ナシだと1.67°C/hour)という報告もあります[5]。

復温が上手く行かない場合は副腎不全に対してデキサメタゾン4㎎もしくはハイドロコルチゾン100㎎に加えて、甲状腺機能低下を疑う場合にはレボチロキシン250μgを追加しても良いと思われます(コーチゾールおよび甲状腺機能の採血はあらかじめとっておく)。

その他の鑑別は多岐に渡りますが、AIUEOTIPS+熱傷、急性膵炎、神経性食思不振症、栄養失調、神経変性疾患などに収まるでしょう。(上記3つは初期治療に組み込む必要があるので特に重要)

 

■低体温患者は心臓の過敏性がある

→丁重に扱わないと心室不整脈を起こすかもしれない(かといって、必要な介入を避けてはいけない)ので注意が必要です。

 

■胸骨圧迫はどうするか

→DNAR、致死的損傷が既にある場合、凍結して有効な胸骨圧迫ができない場合はしなくても良い。少しでも生命兆候がある場合や、無脈静電気活動の場合であっても心電図波形が出ている場合も胸骨圧迫はしなくて良い(明確な科学的根拠はない)とされています。

ただし、心静止になった場合は胸骨圧迫が必要で、自己心拍の再開を確認するには触診よりも、ドップラーエコーや経食道心臓超音波が有効かもしれません。

ちなみに、瞳孔散大や四肢の硬直も死亡の根拠にはならないので注意。

 

心室細動や心静止

→基本的には30℃程度に復温しないと治療抵抗性であることが多いと言われています。そういう場合はECLSに移行するのが確実ですが、そうでない場合は除細動は1度行ってみて、無効であれば1-2℃復温してもう1度除細動を行い、30℃を越えてきたら通常のACLSで対応します。

 

■いつまで、だれを蘇生するか

→非常に難しいです。低体温の症例は数時間の蘇生が必要な場合もあるというのはよく知られています。生化学的なマーカーとしては、K>12meq/l、アンモニア>420μg/dl、フィブリノゲン<50㎎/dl、乳酸上昇などがあると厳しいかもしれません。

 

■rewarming shock

→寒冷利尿の影響もあり、循環血漿量減少をともなっていることが多いです。復温されて末梢血管が拡張すると、rewarming shockを起こすので、大量の加温輸液を予め行っておく必要があります。昇圧薬の使用は特に制限なし、中心静脈路を確保する場合は大腿の方が不整脈を起こしにくいかもしれません。


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長くなりましたが、以上です。 「低体温症(熱中症、アルコール中毒)の診断をする場合は、そのウラにある疾患(特にAIUEOTIPSに該当するようなもの)を見逃すな!」 をキーメッセージとしてお伝えしたいと思います。それではまた。 <参考文献> 1. Ken Zafren, MD. **Accidental hypothermia in adults.** In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on January 03, 2022.) 2. Murakami T, Yoshida T, Kurokochi A, Takamatsu K, Teranishi Y, Shigeta K, et al. Accidental Hypothermia Treated by Hemodialysis in the Acute Phase: Three Case Reports and a Review of the Literature. Intern Med. 2019 Sep 15;58(18):2743–8. 3. Gilardi E, Petrucci M, Sabia L, Wolde Sellasie K, Grieco DL, Pennisi MA. High-flow nasal cannula for body rewarming in hypothermia. Crit Care. 2020 Mar 30;24(1):122. 4. Tan JL, Saks M, DelCollo JM, Paryavi M, Visvanathan S, Geller C. Accidental hypothermia cardiac arrest treated successfully with invasive body cavity lavage. QJM. 2018 Aug 1;111(8):563-564. 5. Delaney KA, Vassallo SU, Larkin GL, Goldfrank LR. Rewarming rates in urban patients with hypothermia: prediction of underlying infection. Acad Emerg Med. 2006 Sep;13(9):913-21.

大量メトトレキサート療法後の中毒に関するreview の話

ご無沙汰しています。
外科研修を一区切りして、救命センターでの勤務に戻っています。
COVID19と付き合いつつも、通常通り救急集中治療をやっています。
今日は、血液内科の化学療法後、メトトレキサート(MTX)中毒の症例があったので、review articleを読んでまとめてみました。
 
2016年のreviewなので少し古めですが良くまとまっていました(”Preventing andManaging Toxicities of High-Dose Methotrexate”)
本文中の図表に関しては、ぜひ本文を読んでもらえればと思います。
要点としては、
MTXは葉酸代謝を阻害することでDNA合成を阻害し抗腫瘍効果を発揮する
500mg/m2以上の用量を静脈内投与する方法は、高用量メトトレキサート(HDMTX)と定義される
□大量MTX(HDMTX)では、MTXが尿細管で結晶化することで腎障害を起こす(約2-12%)
□腎障害が起きるとさらに負のスパイラル陥る
□併用する薬剤は相互作用がないか全てチェックが必要
□腎障害以外に、骨髄抑制、粘膜障害、皮膚障害、肝障害がある
□MTX中毒の予防は、hydration、尿のアルカリ化(MTXの溶解度が上がり、尿への排出が促進)、ロイコボリン(フォリン酸)
□中毒が起きた場合はhydrationの強化や高容量ロイコボリン、glucaripidase(国内未承認?)の投与を行う
血液透析は一時的にMTX濃度を下げるが、3rd spaceから戻ってくるMTXもあるので、透析後のリバウンドに注意。透析法も確立したものはない。ロイコボリンやグルカルピターゼを透析してしまうので注意が必要。 
ロイコボリン®は国内では3㎎/㎖(364円/筒)の注射製剤と5㎎の内服がある
効能効果は”葉酸代謝拮抗剤(MTX)の毒性軽減”
MTX通常療法の場合は、症状出現時に1回6-12㎎を6時間毎筋注
レスキュー投与とする場合は、1回15㎎を3時間間隔で9回静脈注射→以後は6時間間隔で8回静脈注射
 
 
□ちなみに、尿のアルカリ化に用いるメイロン 8.4% 250ml®は1000meq/l(1meq/ml)
浸透圧比 6 pH 7-8.5の薬剤(重炭酸ナトリウムが21g(Naが4.5g HCO3-が17.5g)入っている)
 
 
以下は、review articleの内容です。(長いです)
 
 
■introduction
MTXは、葉酸代謝を阻害する代謝拮抗薬。MTXは細胞内に入るとポリグルタミン酸化し、葉酸の1,000倍の親和性でジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)と結合し、ジヒドロ葉酸のテトラヒドロ葉酸への変換を競合的に阻害する。テトラヒドロ葉酸は、DNAの合成に必要なチミジンやプリンの生合成に不可欠な物質である。MTXは、急性リンパ性白血病(ALL)の治療に欠かせない薬剤であり、多くのがんに効果がある
MTXの投与量は、ALLの維持化学療法として、週1回12mgを髄腔内に、20mg/m2を経口、筋肉内、または静脈内に投与するものから、その他の適応症で33,000mg/m2を静脈内に投与するものまである。500mg/m2以上の用量を静脈内投与する方法は、高用量メトトレキサート(HDMTX)と定義され、ALL、骨肉腫、リンパ腫など、さまざまな成人および小児のがんの治療に用いられている。毒性を防ぐためには、標準化された支持療法を徹底して行う必要があり、腫瘍の種類や治療プロトコルによって異なる(表1)。
 
■HDMTXの有害事象
AKIは2-12%に起こる。もちろん、宿主因子、使用した支持療法、およびHDMTXの投与量とスケジュールによって程度は異なる。例えば、リンパ腫患者のHDMTX使用者の9.1%がAKIを併発しているのに対し、肉腫患者のHDMTXでは1.5%に過ぎない。HDMTXによる腎毒性は、MTXおよびその代謝物が腎尿細管内で沈殿することで生じる結晶誘発性腎症によって生じる。MTXは酸性であるため、pHがアルカリ性の尿では薬物の結晶は見られず(アルカリ化によってMTXの溶解度と排泄量が大幅に増加するからである)結晶誘発性腎症は、最初は血清Creの上昇として現れ、その後、尿細管壊死およびより重篤な腎障害へと進行する。
循環血漿量減少と酸性尿はAKIの主要な危険因子であるためHDMTX治療中は水分補給と尿のアルカリ化が必須である。薬物相互作用は、MTXの排泄遅延およびその後の腎毒性の原因となる可能性がある。有害な相互作用のリスクが最も高い薬剤は、腎尿細管分泌と競合してMTXのクリアランスを阻害するものである。
NSAIDs、ペニシリン系抗菌薬、サリチル酸、プロベネシド、ST合剤
アムホテリシン、アミノグリコシド、造影剤、PPI(機序不明)、レベチラセタムetc
などは注意が必要。
 
MTXによる急性腎障害はMTXの蓄積につながり、さらなる有害事象のリスクが増大する。(骨髄抑制、粘膜炎、肝毒性、さらに重症の場合は多臓器不全を引き起こす可能性がある)適切な制吐剤を使用していても、HDMTXを投与されている患者の10%~30%に嘔吐が生じる。
American Society of Clinical Oncologyの制吐剤治療に関するガイドラインでは、HDMTXは嘔吐リスクが低いと分類されており、吐き気および嘔吐のリスクを軽減するためにデキサメタゾンを推奨している。5-HT3拮抗薬はほぼ共通して使用される。
一過性の肝毒性として、最大で60%に可逆性化学肝炎、25%に高ビリルビン血症が発生する可能性がある。15%には一過性の中枢神経系(CNS)の障害が出現し、片麻痺、発作などの重大な症状を起こす。結膜炎の発生はまれであり、局所的な治療で対処できる。肺毒性もまれである。
 
■HDMTXの有害事象のリスクファクター
volume depressionが最も重要。嘔吐や下痢による体液の喪失、副腎不全、腎性塩類喪失などが原因となる。血管内容積の減少は、腎低灌流を引き起こし、それに伴い尿量が減少する。MTX結晶の析出は、酸性尿(pH 5.5)で起こる。腎内での結晶形成は、尿細管の閉塞、腎尿細管上皮への直接的な毒性損傷および求心性細動脈の血管収縮による低灌流を引き起こし、これらはそれぞれ独立してAKIを悪化させる可能性がある。また、MTXの投与により、重度の体液バランスの変化をもたらす多尿も報告されている(カニズムは依然として不明であるが、メトトレキサート関連の多尿を呈する患者は、体液バランスを維持して腎低灌流を防ぐために、体液の状態を特に注意深く監視し、静脈内の液体を頻繁に調整する必要がある )
前コースでHDMTXの毒性を示したことのある患者は、その後の腎毒性のリスクが高い。しかし、中毒を呈した場合でも、患者が回復した後にHDMTXを安全に投与できるのが一般的である。成人がん患者の60%がある程度の腎機能障害を有しており、AKIのリスクがある。HDMTX投与前のクレアチニンリアランス(Crcl)の低下は腎毒性を予測し、HDMTX投与前のCrClおよび血清クレアチニン濃度は、注入後の血漿MTX濃度を予測するのに有用である。HDMTXの投与量を減らす、またはその後のHDMTXを省略するための具体的なCrClのカットオフ値は確立されていないが、投与量を減らすための上限カットオフ値は50-60 mL/minから始まり、CrClが10-30 mL/min以下になった場合にはさらなるHDMTXを減量することが推奨されている。AKIリスクに寄与するその他の因子には、以前の他の薬物毒性(例:シスプラチンなど)による既存の腎機能低下や関連疾患、腫瘍に関連した代謝異常、高齢、および薬理遺伝学的因子(相対的または絶対的な葉酸欠乏を伴う高ホモシステイン血症など)(表2)がある。
これに関連して、MTXの排泄遅延は、腹水、胸水、頭蓋内液などの血管外液貯留と関連している(このような状況でHDMTXを後日に延期すべきかどうかは、リスクと延期の利点のバランスによる)
腎障害の既往は、低用量のメトトレキサートであっても毒性と関連しており、腎機能障害がある場合にはHDMTX投与時に一層の注意が必要である。注意点として、AKIの場合、血清クレアチニン値の上昇は、本質的な腎障害の進行に遅れて起きるため、むしろ、尿量の減少、体液バランスの陽性化、または体重の変化に注意する必要がある。
 
■通常のHDMTXの支持療法(中毒が起きる前の支持療法)
腎機能が正常なほとんどの患者では、いくつかの支持療法を用いてHDMTXを安全に投与することができる。これらの戦略には、MTXの輸液を開始する前に、相互作用の可能性がある薬の調整、十分な水分補給、および尿のアルカリ化(目標pHは7以上)が含まれる。目標は、尿中のMTXの溶解度と希釈度を高めることであり、血清MTX濃度の推移から判断してロイコボリンを投与し、潜在的な致死毒性を防ぐことである。
具体的には、
1. MTXのクリアランスを阻害する薬剤の中止
HDMTXの投与を開始する前に、すべての処方薬、市販薬を照合し、文書化しなければならない。半減期が長いため、一部の薬物(例えば、ナプロキセンナトリウム)はMTXの排泄を何時間も遅延する可能性がある。
2. Hydration
MTXの90%以上が腎臓から排出される。尿流量を確保し、尿をアルカリ化する。多くの小児用プロトコールでは、MTXの注入開始の12時間前から1時間あたり200mL/m2以上または1時間あたり100~150mL/m2以上の水分補給を少なくとも2時間行い、中毒の既往歴がある患者やMTXの排泄が遅れると思われる患者の場合は24~48時間以上続けることが推奨されている。成人では、HDMTXの注入前に重炭酸塩を含む水分を1時間あたり150~200mL、合計2L摂取することがよく行われる。MTXの投与中および投与後は、水分の摂取量および排出量を厳密にモニターすることが推奨される。
3. 尿のアルカリ化
MTXおよびその代謝物(7-OH-メトトレキサートおよび4-デオキシ-4-アミノ-N-10-メチルプテロ酸(DAMPA)を含む)は、酸性のpHでは溶解しにくい。尿のpHが6.0から7.0に上昇すると、MTXおよびその代謝物の溶解度は5~8倍になり、管内結晶形成(沈殿)を抑えるためにはアルカリ化が必須である。MTXの投与前には尿中のpHが7以上であることが望ましい。また、沈殿、腎毒性、MTXの排泄遅延などのリスクを高める可能性のある酸性尿が長時間出ないように、尿中のpH値をチェックすることも重要である。尿pHが6.5の場合は12.5mEq/m2の炭酸水素ナトリウムを投与し、尿pHが6.5の場合は25mEq/m2を投与する。アルカリ性の尿を得るために炭酸水素ナトリウムのボーラス投与を繰り返さなければならないこともあるため、HDMTXの注入中は1時間ごとに尿pHを測定する。血清アルカローシスがあり、尿のアルカリ化が不十分な患者では、炭酸脱水酵素阻害剤であるアセタゾラミド(1日4回、250~500mg p.o.)を追加することで、血清pHを上昇させることなく、ナトリウム、水、重炭酸塩の腎排泄を増加させ、尿を直接アルカリ化することができる。
4. ロイコボリン
30年以上にわたり、ロイコボリンのレスキューはHDMTX治療の要となっている。ロイコボリンは、HDMTX治療中の骨髄抑制、消化管毒性、神経毒性の予防に特に有効である。HDMTXを含む化学療法プロトコールでは、正常細胞を保護するためにロイコボリンの投与時期、投与量、投与期間についても推奨されている(表1)。ロイコボリンはMTXの作用を中和するため、早期に投与を開始すると毒性だけでなく抗がん作用も低下してしまうため、投与を開始してはならない。
 
■HDMTX中のモニタリング
MTXの薬物動態によって、治療後に必要な支持療法やモニタリングの程度が決まる。
HDMTXを注入した後の濃度は、患者間および同一患者内でもサイクルごとに大きく変化する。血漿タンパク結合、滲出液、腎機能、および程度は低いが肝機能のすべてが、注入後のピーク濃度に寄与しうる。Evansらの薬物動態モデルのデータによると、点滴開始後24時間で10mMを超えると毒性のリスクが高くなる。MTXは主に腎臓から排出されるためHDMTXの投与前、投与中、および投与後に評価しなければならない。現在用いられている腎機能の測定法には、血清クレアチニン、尿量、尿pH、および血中尿素窒素がある。血清クレアチニン濃度およびその他のパラメータが正常値よりも上昇した場合は、潜在的な腎機能障害およびMTXの排泄遅延を示している。
電子カルテに臨床決定支援機能を組み込むことで、血清クレアチニンの急性の変化やMTXの排泄を遅らせる可能性のある医薬品の処方を臨床医に警告することができる。自動化された早期警告は、点滴の速度を上げる、MTXのクリアランスを妨げない代替薬に変更する、さらに極端な場合には毒性を防ぐためにMTXの注入を早期に停止するなど、迅速な介入を可能にする。HDMTXを含む治療プロトコールには、クレアチニンリアランスが低下した患者の投与量を減らす戦略が記載されていることもある。腎障害を早期に発見するための代替バイオマーカーの有用性は、現在活発に研究されている分野である。治療の各サイクルにおけるMTXのクリアランスの遅れを検出するために、血漿中のMTX濃度を注意深く観察すべきである。レジメンによっては、MTXの注入開始から24時間後、48時間後、および72時間後の測定が適切な場合がある。他のプロトコルでは、血清MTXの測定を36時間後(すなわち、24時間の注入開始から12時間後)または開始から42時間後に行う必要がある。
重要なことは、ロイコボリンの投与量は血漿MTX濃度に応じて調整され、水分補給およびアルカリ化は安全性を最適化するために微調整できるということである。
血清MTX濃度は、目標の0.05~0.1mM未満に到達するまで、水分補給、アルカリ化、およびロイコボリンのレスキューを継続的に調整しながら監視すべきである。血漿MTXのモニタリングは、特に腎毒性の信頼できる指標であるが、他の毒性の予測には限界があるかもしれない。
MTX濃度をモニターできない施設では、尿pHと尿量、血清クレアチニンを注意深くモニターし、1日2回、粘膜に炎症の兆候がないかどうかを調べることで、ほとんどの患者に安全にHDMTXを投与することができる。
 
■HDMTXによる中毒が疑われた場合の対応
1. 腎毒性
HDMTX後にAKIが発生した場合には、積極的な支持療法が必要である。アルカリ性の輸液を継続し、必要に応じてアセタゾラミドを加えて尿中のpHを7に保つことで、MTXの排泄が促進され、ネフロンでの結晶形成が減少する。輸液速度を最大許容量(1日あたり3L/m2/day)にすることが推奨される。
心不全のリスクがある患者に対しては、水分バランスへの配慮、頻繁な症状の評価、肺の検査、パルスオキシメトリ、胸部X線検査または心エコー検査を行うことで、最小限のリスクで積極的な水分補給を行うことができる。非常に積極的な水分補給で胸水が発生することがあるが、ほとんどの患者でMTXの排泄が遅れるのは主に腎機能障害によるものであるため、リスクとベネフィットの関係からは、ほとんどの症例で水分補給を継続することが望ましい。
 
過剰なMTXを除去するために腎代替療法が用いられている。血清中のMTXの分布およびその限られた蛋白結合(58%)に基づいて論理的に行われているが結果はまちまちである。倫理的な配慮から、研究では透析を受けていない適切な対照患者を欠いていたり、付随する介入(ロイコボリンの投与量、グルカルピダーゼの使用など)の違いによって解釈が難しい。さらに、プラスマフェレーシス、活性炭カラム、高フラックス血液透析、通常の血液透析、腹膜透析など、対照群を持たないさまざまなアプローチのレトロスペクティブな分析では、1つの最適な戦略を特定することは困難である。
透析の合併症も考慮しなければならないが、特に重症の患者では電解質異常、カテーテル部位での出血、心停止のリスクが高い。血液透析を用いる場合には迅速な導入が重要であるが、結果にばらつきがあり、MTX濃度がリバウンドして上昇するため、継続的なモニタリングと必要に応じた透析の繰り返しが必要となる。
どのような場合でも、MTXが完全に消失するまで高用量のロイコボリンを投与すべきである。非常に重篤な患者では、その後さらに1~2日継続することが正当化される。ロイコボリンは透析によって除去されるため、その後に再投与する必要がある。
2. 肝障害
HDMTX後の肝毒性は、肝線維症のリスクがあり、肝酵素値の定期的なモニタリングが必要な関節リウマチ患者に使用されるMTXの低用量・長期経口投与に比べてはるかに少ない。実際、ほとんどすべての患者がHDMTX後に血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の値が上昇するが、ほとんどの症例は一過性で可逆的であり、慢性肝疾患に至ることはないため、これらの検査所見は臨床的に重要ではなく、その後のHDMTXのコースを調整する必要もない。MTXによって悪化する可能性のある肝炎症や機能障害の証拠がないことを確認するために、HDMTXの各コースの前にAST、ALT、およびビリルビンを測定することが望ましい。MTXの長期投与における肝毒性の危険因子には、アルコール、B型およびC型肝炎ウイルス感染がある。これらはHDMTXの合併症としては記録されていないが、リスクを最小限に抑えるためには、HDMTXの前にアルコールを避け、肝炎感染をコントロールすることが望まれる。既存の脂肪性肝炎はMTXの毒性を増加させる可能性がある。
3. 中枢神経障害
HDMTX後に中枢神経毒性が発生することがあり、髄腔内治療、頭蓋照射、悪性細胞の浸潤、CNS毒素の併用などがリスクを高め、病因を混乱させる。患者の最大11%が錯乱、痙攣、傾眠、頭痛などのCNSイベントを起こす可能性がある。例えば、小児のALL患者の3%が急性脳症を発症し、薬物動態パラメータでは発症を予測できなかった。症状は典型的には24時間以内に発生し、しばしば自然に消失し、長期的な後遺症が残ることはまれである。42時間後のメトトレキサートとロイコボリンの比率の上昇は、中枢神経毒性のリスクがある人を予測する可能性があり、神経発達に関連する遺伝子(TRIO、PRKG1、ANK1、COL4A2、NTN1、ASTN2など)の多型もリスクを高める可能性がある。神経毒性の潜在的なメカニズムは、MTXによるプリン合成の低下に伴うアデノシンの蓄積である。毒性を持つ患者の脳内でアデノシンが増加したことから、一部の研究者は、中枢の受容体からアデノシンを置換する能力に基づいて、小児ALL患者にアミノフィリンを1時間2.5mg/kg注入することを評価した。治療を受けた6人の患者では、4人は他の手段(コルチコステロイドなど)では改善しなかった症状が完全に消失し、2人は吐き気が持続したが他の症状はなかった。しかし、MTXによる神経毒性の治療または予防におけるアミノフィリンの有効性を示す決定的な研究はない。中枢神経毒性を発症した患者は、特に発症から24時間以内に症状が改善しない場合は、可能性のあるすべての薬剤を中止し、MRIを実施すべきである。
4. 粘膜障害
口腔粘膜炎は、用量制限のある毒性となり、オピオイドの使用が必要となり、感染症のリスクが高まり、化学療法の遅延につながる。粘膜炎に関連する生物学的プロセスは、内皮、細胞外マトリックス、メタロプロテイナ-ゼ、粘膜下反応、結合組織が関与する細胞と組織の相互作用の系統的なカスケードに基づいて、最終的に粘膜バリアーの損傷を引き起こす。HDMTX後の粘膜炎は、消化管全体の急速に分裂している上皮細胞の細胞損傷によって引き起こされる。ロイコボリンのレスキューが不十分または遅れた場合、上皮細胞の成長と再生が損なわれる。グレードIVの粘膜炎は、腫瘍学的な緊急事態であり、感染症、非経口栄養の必要性、医療資源の使用の増加、化学療法の遅延、さらには死亡と関連する。口腔粘膜炎の予防や治療には、アイスチップ、グルタミンとN-アセチルシステイン、塩酸ベンジダミン、プロスタグランジンE1およびE2など、さまざまな方法が用いられてきたが、HDMTXの長期注入を受けている患者への効果は証明されていない。上皮細胞の成長を促すリコンビナントヒトケラチノサイト成長因子であるパリフェルミンは、HDMTX後の粘膜炎の発生率を低下させる。最近、粘膜炎を予防・治療するための介入が検討されているが、HDMTXを受けている患者に標準的に行われているものはない。
5. 骨髄抑制
サードスペースや体液の蓄積、または腎障害の結果として排泄が遅れると、好中球減少症および血小板減少症が重篤化する可能性がある。骨髄抑制に対しては、発熱性好中球減少症および輸血に対する標準的な治療法を行う。骨髄抑制を予防する唯一の方法は、注入時に相互作用のある薬剤を避け、治療前に胸水を抜いてMTXの排泄遅延を防ぐこと(または胸水がなくなるまでHDMTXを遅らせること)、およびロイコボリンの最適な投与量を確保することである。
 
 ■グルカルピターゼ
※グルカルピターゼは2021/3に大原薬品が承認申請を行いました(https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=70876
ブログ記載時点では使用できませんがいずれ使用することもあろうと思いますので、以下にReviewの内容を記載します。
 
グルカルピダーゼを用いたMTXの酵素的切断は1972年に初めて報告された。グルカルピダーゼは、2012年に米国食品医薬品局(FDA)より、MTXの排泄が遅れている患者やAKI、血漿メトトレキサート濃度が0.1μmol/Lを超える患者に対して承認された。グルカルピダーゼは、MTXを無毒な代謝物であるDAMPAとグルタミン酸に切断するため、腎機能障害のある患者において迅速に除去する。
グルカルピダーゼの単回投与(50 U/kg i.v.を5分かけて投与)により、血漿中のMTX濃度は15分以内に97%以上減少する。しかし、細胞内のMTX濃度には影響を及ぼさない。したがって、透析の場合と同様に、細胞から放出される残留MTXを除去するために腎機能が十分に回復するまで、高用量のロイコボリンを併用することが必要である。グルカルピダーゼ投与後は、MTX濃度が数日間にわたって検出不可能に近いレベルに維持されるまでロイコボリンを継続すべきである。MTXと同様にロイコボリンもグルカルピダーゼの基質であるため、ロイコボリンはグルカルピダーゼの投与前後2時間以内に投与すべきではない。グルカルピダーゼが必要な患者では、水分補給と尿のアルカリ化も継続すべきである。
グルカルピダーゼの投与後48時間以内はクロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー)法でのみ、MTX濃度を測定できる。これはMTX酵素分解によって生成されたDAMPAが標準的な免疫測定法でMTXと交差反応し、人為的に濃度が上昇するからである。DAMPAの半減期が長い(約9時間)ため、グルカルピダーゼ投与後数日間はイムノアッセイを使用することができない。
薬理学的な原則に基づいて、ロイコボリンとグルカルピダーゼの投与量を正しく決定することが重要である。グルカルピダーゼは血漿中にしか存在しないため、間質や細胞内のロイコボリン濃度はグルカルピダーゼの影響を直接受けない。グルカルピダーゼは、5分以上かけて1回の点滴で投与され、半減期は5.6時間である。
ロイコボリンは、グルカルピダーゼの2~3時間後に投与し、その後はMTXの濃度に応じた用量で3~6時間ごとに投与する。血漿中のMTX濃度を低下させると、MTXとロイコボリンの細胞内へのアクセスをめぐる競合が減少する。したがって、血漿MTX濃度の低下とグルカルピダーゼの一時的な結合により、ロイコボリンの細胞内輸送が促進されると考えられる。ロイコボリンは、グルカルピダーゼ前のMTX濃度に適した用量で、グルカルピダーゼ後48時間継続する。重要なことは、MTX濃度が非常に高い場合には、血漿中のロイコボリン濃度が細胞内毒性を回復するのに十分に高くならないことである。死亡率を低下させるためには、緊急の血液透析とグルカルピダーゼおよび超高用量のロイコボリンの投与が必要である。
HDMTXの投与が遅れれば、悪性腫瘍の治療が遅れることにつながる。適切な対応をして可能な限りHDMTXを施行すべきである。Christensenらによれば、1998年から2010年にかけてセント・ジュード小児研究病院で合計4,909コースのHDMTX(1g/m2)の投与を受けた1,141人の小児腫瘍患者の臨床経過をレビューし、AKIを発症してMTXの排泄が遅れ、グルカルピダーゼが必要となった20人(患者の1.8%、HDMTXコースの0.4%)を特定した。すべての患者がクレアチニン値をベースラインに戻し、MTXの毒性で死亡した患者はおらず、20人中13人がその後合計39コースのHDMTXを受けたが、すべての症例で忍容性が高かった。Widemannらは、4つの多施設、単一群の同情的な臨床試験から得られた有効性データのプール分析において、グルカルピダーゼにより、腎障害患者の血清MTX濃度が99%以上持続的に低下することを示した。懸念されるのは、MTXやその他の腎毒性化学療法剤を投与された小児がん生存者では、後年になって糸球体機能が低下することである。したがって、AKIの予防を確実にすることが必要である。
 
■グルカルピターゼの効果
腎毒性の徴候がある患者に対して、標準的な管理アプローチと併用してグルカルピダーゼを使用した治療法が、Widemannらによって発表された。Widemannらは、1993年11月から2009年6月までに492人のがん患者にMTXの毒性に対してグルカルピダーゼを使用した15年間の結果を報告している。
Widemannらは、グルカルピダーゼを1~3回投与し、標準的なロイコボリンによるレスキューを受けた100人の患者を対象に、グルカルピダーゼ、ロイコボリン、およびチミジンの追加経験を報告した。最初の35人の患者には、チミジンが持続的に投与された。その後、チミジンの投与は、MTXの曝露時間が長い患者、またはMTXの毒性が強い患者に限られた。血漿中のMTX濃度は、グルカルピダーゼの初回投与後15分以内に99%減少した。この結果は、迅速なグルカルピダーゼ投与の重要性を強調するものである。12人の死亡者のうち、6人がMTXに直接関連していると考えられた。その理由は、グレード4の骨髄抑制(n55)、グレード3または4の粘膜炎(n54)、敗血症(n55)、中毒性表皮壊死症(n52)が発生したためである。グレード4および5の毒性の予測因子は、グルカルピダーゼ投与前にグレード4の毒性があったこと、ロイコボリン投与量の初期増加が不十分であったこと、グルカルピダーゼの投与がMTXの点滴開始から96時間以上経過していたことなどであった。その他の患者の死亡は、主に急速ながんの進行に起因するものであった。重篤な毒性の主な危険因子は、既存の毒性、ロイコボリンの不適切な増量、およびグルカルピダーゼ投与の遅延である。
 
■結論
HDMTXは、脱水症状、尿アルカリ化、薬物動態学的に導かれたロイコボリンのレスキューを用いて、腎機能が正常な患者に安全に投与することができる。MTX中毒の管理を成功させるには、MTXの排泄遅延と腎機能障害を適時に認識する必要がある。特に、HDMTX後の血清クレアチニン濃度の上昇または尿量の減少は、医療上の緊急事態を意味する。水分補給の増加、ロイコボリンの大量投与、およびグルカルピダーゼ(必要に応じて)は、MTX濃度を効果的に低下させ、MTXから細胞を保護するが、さらなる毒性を防ぎ、腎機能の回復を促進し、腎機能が正常化した後に患者がHDMTX療法を再開できるようにするためには、これらの措置をできるだけ早期に実施しなければならない。
 
<参考文献>
Howard SC, McCormick J, Pui CH, Buddington RK, Harvey RD. Preventing and Managing Toxicities of High-Dose Methotrexate. Oncologist. 2016 Dec;21(12):1471-1482. 
 

会陰裂傷の話

今回は会陰裂傷についてのまとめです。3度以上の裂傷の場合,外科として相談を受ける(主に肛門の縫合,ひどい場合は人工肛門造設…)ので基本事項を確認しました。
 
今回は,
 
1.会陰裂傷の分類
2.会陰裂傷の治療方針
3.会陰裂傷の予後
 
についてまとめました。
 

1.会陰裂傷の分類

文献によって微妙な分類に違いはあるようですが,ほとんどの場合は,1~4度に分類されるようです。Up to dateでは下記の通り1度~4度に分類されていて,3度が細かく分けられています。[1]

 
1度 … 皮膚,皮下組織のみの損傷(会陰部の筋肉は損傷なし)
2度 … Perineal body(会陰体)の損傷(会陰横筋を含むが肛門括約筋には達しない)
3度 … exrenal anal sphincter(外肛門括約筋=EAS)もしくはinternal anal sphincter(内肛門括約筋=IAS)の損傷(直腸粘膜はintact)
(※EAS損傷が50%未満は3a,50%以上であれば3b,EASとIAS両方の損傷があれば3c)
4度 … EAS/IASを経てanal mucosa(直腸粘膜)まで達する損傷
 
文字で見るとイメージしにくいですが,膣周囲→直腸へと裂創が進展していくと重症度が増します。どれくらい直腸が損傷されているかが重要で,3度以上になると外科,産婦人科で協働する必要があります。
 
2.会陰裂傷の治療方針
会陰裂傷を疑った場合にまずすることは,「出血と損傷の確認」です。視診のみならず触診を行い,評価します。出産直後の段階では直腸損傷の多くは見逃されがちで,十分注意が必要です。(これは,現場で体験すると実感しますが,実際に産直後は悪露や出血,便などで非常に視野が悪いので無理もないかなと思います。直腸診なども積極的に行いたいところです)

基本的には裂傷は縫合する必要がありますが,1度・2度の裂傷の場合は抗生剤は不要。
3度以上であれば第2世代セフェム抗菌薬を単回投与(βラクタムアレルギーある場合は,クリンダマイシン)することで合併症が減る可能性があります。
状況にもよりますが3度以上であれば,手術室での処置が必要になる場合もあります。
 
3度以上の修復は工夫が必要で膣壁をガーゼなどで圧迫,出血を制御し開創器を用いて,創部をよく観察して縫合します。
理想としては直腸粘膜,ESA,ISAをそれぞれ別々にきちんと縫合したい(直腸粘膜は3-0/4-0,肛門括約筋は3-0/2-0で…と,実際はかなり難しいと思いますが,肛門機能不全を防ぐ意味で重要です)ところです。
※Up to dateの本文に細かい縫合について述べられていますので興味ある方は参照してください。
 
3.会陰裂傷の予後
3度以上の裂傷の場合は25%に創離開,20%に創部感染が起こると言われています。
便失禁や子宮脱など骨盤底筋群以上も合併する可能性があり,詳細は定かになっていません。(※Pubmedで少し文献検索((Prognosis/Narrow[filter]) AND (Perineal laceration) )すると,フランス語記載のReviewがヒットしました。これによると,長期的には35-60%程度に便失禁が見られるようです。[2])
 
Up to dateでは経腟分娩時の直腸損傷はObstetric anal sphincter injury (OASIS)と別項目でもまとめられていますが,それによると経腟分娩の6.3%,初産婦の5.7%に起こるとされています[3]。分娩時に発覚するOASISはImmediate OASIS,数週間たってからのOASISはPostpartum OASISと呼称されます。機能予後については残念ながらこちらでは詳しく触れられていません。
 
その他,医中誌やgoogle scholarでケースレポートを見ると,産後に限らず言えば,性交渉や外傷に伴って受傷した会陰部の外傷では(便による創部の汚染を避ける意味で)人工肛門造設する症例もあるようです。
 
調べてみると,やはり現場ではケースバイケースで考えざるを得ないようです。
急性期の治療内容だけでなく,保存療法や肛門機能を回復するための手術なども機会があればまとめてみたいと思います。
 
それでは。
 
 
【参考文献】
1.Marc R Toglia, MD et al.Repair of perineal and other lacerations associated with childbirth. http://www.uptodate.com (Accessed on April 27, 2020.)
 
2.T Thubert et al.Definition, Epidemiology and Risk Factors of Obstetric Anal Sphincter Injuries: CNGOF Perineal Prevention and Protection in Obstetrics Guidelines.Gynécologie Obstétrique Fertilité & Sénologie. 2018 Dec;46(12):913-921.
 
3.Milena M Weinstein, MD et al.Obstetric anal sphincter injury (OASIS).http://www.uptodate.com (Accessed on April 27, 2020.)
 
 

憩室炎の話

こんにちは。最近、憩室炎の入院が立て続いておりましたのでまとめです。

憩室炎のイニシャルマネジメントはそれなりに救急医時代にも学んでいたのですが、保存加療後の外来マネジメントについてはあんまり学んだことがなかったので改めて、勉強しました。

 

基本的にはUp to dateを参照することが多いのですが、今回は「一般社団法人日本消化管学会.大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン」がMindsで公開されていたので対比しつつまとめてみたいと思います。

 

以下

0.大腸憩室炎の疫学

1.大腸憩室炎の初期診療

2.大腸憩室炎の外来フォローで下部消化管内視鏡は必須か

3.大腸憩室炎を繰り返す場合はやっぱり手術なのか

という内容でまとめました。

 

0.大腸憩室炎の疫学

大腸憩室症ガイドライン(1)によれば,本邦において

 

・40-60歳では右側結腸に多く,高齢になると左側に多い

・左側結腸憩室炎の方が合併症を有する確率が高い

・危険因子に関しては明らかなものはないが,肥満や喫煙は関連があるかもしれない

・膿瘍などを伴っているものは全体の16%程度,その場合の死亡率は2.8%(合併症がない普通の大腸憩室炎では0.2%)

・大腸憩室炎と大腸癌の関係は不明である

 

と言った疫学的特徴があるようです。

大腸癌でもそうですが,右側と左側で発症年齢にばらつきがあることや,予後が変わるのは発生学的な影響もあるのでしょうか?ちょっと興味深いですね。

危険因子や大腸癌との関連もあまりはっきりしたものはなさそうですが,これについては後述します。

 

 

1.大腸憩室炎の初期診療

大腸憩室症ガイドライン(1)では,初期診療の要旨としては下記のような記載がありました。

①「膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎に抗菌薬は不要とする報告はあるが,日本人のデータはなく不明であり,現状では抗菌薬投与は許容される」(エビデンスC,合致率100%)

②「膿瘍がおおよそ3㎝以下の場合には,抗菌薬投与と腸管安静を推奨する。一方,膿瘍がおおよそ5㎝を超える場合には,超音波あるいはCTガイド下ドレナージと抗菌薬投与,腸管安静を実施することを推奨する。3-5㎝の境界サイズの膿瘍は,患者の病態,人的・施設的ドレナージ実施可能性など勘案して,個々に治療法を選択する」(エビデンスC,合致率100%)

③「汎発性腹膜炎を呈する大腸憩室炎は緊急手術を実施することを推奨する」(エビデンスA,合致率100%)

 

③については異論はないと思います。保存加療が失敗した場合も手術ですね。

①については自分の不勉強で知りませんでしたが,軽症の場合は抗菌薬使用しなくても予後に差が出なかったという報告が2013-2017年までで散見されるようです。(原著については今回未確認)

自分だったら,抗菌薬なしで経過診れるかと言うと…自信はないです。

 

ガイドラインでは,特に具体的な抗菌薬の選択について記載なかったため,up to dateも参照しました。

 

Up to dateの“Acute colonic diverticulitis: Medical management.”(2)では,

①外来患者では,7-10日間の経口抗菌薬を処方(腸内細菌叢,特に大腸菌Bacteroides fragilisをカバーするような,AMPC/CVAやCPFX+MTZ,ST合剤+MTZなどを使用),絶食よりはmodifiedな食事制限(飲水を2-3日して,徐々に食上げ)を推奨。

※routineの抗菌薬投与に関しては,別個に記載があり「明確なevidenceはない」として,明言はされていませんでした。各国のガイドラインで推奨が違うようです。

 

②入院治療をする場合は,

・「明らかな消化管穿孔,腸閉塞,多臓器への穿通」があれば手術

・「膿瘍形成」があればドレナージ(ドレナージできなければ抗菌薬)

※ドレナージが成功すれば24-48時間で改善が得られるはずなので,そうでない場合は再評価を行う,場合によっては手術

 

・抗生剤はGNRと嫌気性菌を十分カバーできるようなレジメンを選択。単剤であればカルバペネム系もしくはTAZ/PIPC,2剤以上であればセフェム系もしくはLVFXにMTZ併用。腸球菌想定される場合はABPCやVCM併用)

※本文中には記載されていませんが,本邦で経験的に使用されるABPC/SBTは大腸菌への,CMZやCLDMはBacteroidesへの耐性が懸念されるため上記のような選択になっていると思われます。実際には,軽症例の場合はABPC/SBTやCMZで十分治療できると思いますが…。アンチバイオグラムを確認しながらできるだけ狭域の抗菌薬を選択したいところです。

 

・抗生剤は症状改善まで使用(基本的には3-5日間で奏功),静注の後に内服抗生剤を10-14日間使用する

といった記載になっていました。

双方見比べても,「緊急手術」もしくは「保存加療(ドレナージするかどうかは状況次第)先行して,だめなら手術」というのが大まかな流れで一致してそうですね。

 

★術式の選択について

この辺りは外科医ならではの悩みと思われますが,どのような術式を選択するのかについてもUp to dateのAcute colonic diverticulitis: Surgical management(3)に記載がありました。Hinchey分類(下図参照)でマネジメントが分類されていますが,大雑把に言えば,

 

・Hinchey分類Ⅲ,Ⅳ → vitalが悪ければDCSもあり得るが,基本はHartmann手術

(状態が改善すればストマ閉鎖),切除後吻合する場合はカバーリングストマを併用。

・Hinchey分類Ⅰ,Ⅱ → 汚染が軽度で腸管の状態が良ければ,カバーリングストマ併用で切除後吻合。(患者や腸管の状態がよっぽどよければ,ストマを置かなくても良い)

 

で明確な推奨はやはり難しそうです。大規模な臨床試験が,Hartmann vs カバーリングストマで行われていて大きな差はなさそうですが,やはり再手術は避けたいもので安全な手術に流れていくのは仕方ないかなと思われます。

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Hinchey分類,大腸憩室症ガイドラインより引用

 

 

2.大腸憩室炎の外来フォローで下部消化管内視鏡は必須か

 

大腸憩室症ガイドライン(1)では,

「大腸憩室炎と大腸癌の関連性は不明である。ただし,原疾患として大腸憩室症以外の病変を否定するための大腸内視鏡を,一度は行うことを推奨する」(エビデンスC,合致率100%)と,臨床疫学的には根拠は少ないものの,エキスパートオピニオンとしては推奨されています。

 

Up to dateの“Acute colonic diverticulitis: Medical management.”(2)でも,「もしも1年以上下部内視鏡を行っていなければ,症状改善後,6-8週したところで下部消化管内視鏡を行う。」との推奨でした。

 

なので,「基本的にはやったほうが良いだろう」というのが結論になりそうです。

 

3.保存加療後の大腸憩室炎でどんな時に手術を考慮するのか

あくまでも、「保存加療後」の憩室炎の手術適応についての内容です。

 

大腸憩室症ガイドライン(1)によれば,

・膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎の再発率は報告によって異なりますが13-47%(ただし,再発そのものが重症化のリスクにはならず)

・膿瘍を合併した大腸憩室炎の再発率は30-60%程度

・膿瘍・穿孔を伴わない大腸憩室炎を繰り返すだけでは必ずしも手術適応とならない。(免疫不全患者など一部の症例では待機的手術を考慮する)(エビデンスC,合致率100%)

・大腸憩室治癒後の狭窄を来たした症例では手術を考慮する(エビデンスB,合致率100%)

ということのようです。

 

Up to dateの“Acute colonic diverticulitis: Medical management.”(2)では,どの患者に待機的手術をするかはケースバイケースとしながらも,免疫不全患者(化学療法施行後,移植患者,長期ステロイド使用,糖尿病,腎不全,膠原病患者)などは再発した場合に重篤化しやすいので,可能であれば手術を検討すると述べられています。

 

この辺りは本当に判断が難しいところのようですね…。

 

 

今回は実際に自分の行っている診療について裏をとるような内容になりました。

調べてみると,術式や抗生剤の適応,選択など先人たちも色んなことで迷っていたんだ

なぁとしみじみ感じます。

今後も細々ブログで自分の診療を振り返りつつまとめて行きたいと思います。

 

それでは。

 

 

【参考文献】

1.一般社団法人日本消化管学会.大腸憩室症(憩室出血・憩室炎)ガイドライン .2017.(https://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0348/G0001033

↑日本語です。Mindsで無料公開されています。

 

2.John H Pemberton, MD.Acute colonic diverticulitis: Medical management. http://www.uptodate.com (Accessed on July 4, 2020.)

3.John H Pemberton, MD.Acute colonic diverticulitis: Surgical management. http://www.uptodate.com (Accessed on July 4, 2020.)

↑Up to dateは内科治療と外科治療を分けた記載でした。さすがに,外来マネジメントについては細かく記載されていたので都度確認したほうが良さそうです…。

John H Pembertonさんは,メイヨークリニックの大腸外科の先生です。

 

 

ヨード造影剤アレルギーの話

 ひさびさの更新です。実は2019年度から外科医になりました。

とは言っても,最終的にはまた救急に戻りたいと考えていますし救急専門医は維持するつもりなのでブログのタイトルはそのままです。

今後ともよろしくお願いいたします。(今回の経緯についてはなんとなくnoteにまとめてみました。進路選択の悩みが滲み出た内容なので書くのはちょっと恥ずかしかったです→https://note.mu/ryo31527/n/n4f6a517ac099

 

さて,今回はヨード造影剤アレルギーの話です。

外科になると造影CTを撮るか迷う場面が増えました。すべての検査がそうなのですが,「どれくらいのリスクがあって,検査をすると治療方針がどう変わり得るのか」ということを考えて造影するのかしないのか,選択したいものですが…。

 

今回は,

0.ヨード造影剤アレルギーという言葉の曖昧さについて

1.ヨード造影剤アレルギーのリスク

2.ヨード造影剤アレルギーのリスクがある場合,前投薬はどうするのか

3.もしもヨード造影剤アレルギーが起こったら

の4つについてまとめてみました。

ちなみに,この手の話題に関しては,院内マニュアルがある病院も多いと思うので,不要な混乱を避ける意味でも,まず「自分の病院ではどういう決まりになっているのか」を確認してみることをおすすめします。

今回は,Up to date,放射線医学会の提言,American College of RadiologyやEuropean Society of Urogenital Radiologyのガイドラインを中心に比較してみたいと思います。

 

0.ヨード造影剤アレルギーという言葉の曖昧さについて

ここは本題に入る前に確認です。正直あんまり大事ではないので読み飛ばしても良いと思います。

今回の記事で扱うのは「ヨード造影剤アレルギー」ですが,ヨード造影剤を投与した後に患者さんの体調が悪くなる現象は「ヨード造影剤投与後の急性副作用」です。

Up to dateのDiagnosis and treatment of an acute reaction to a radiologic contrast agentには,

Acute reactions to contrast usually occur within 20 minutes of exposure but are generally defined as those occurring within an hour. They are classified as allergic-like or physiologic based upon the clinical presentation.

と記載があり, allergic-like reactionと physiologic reactionは区別されています。

 

allergic-like reaction(日本語ではアナフィラキシー「様」反応と訳されますが)はIgEを介さないとされているため,狭義の意味ではアナフィラキシーと呼ばないとされていますが症状はアナフィラキシーと同じです。

実際には,臨床の現場で「造影剤アレルギー」と呼ばれているものは,正確にはヨード造影剤に対するアナフィラキシー反応なんですね。

まぁ,ここを正確に理解せずとも実際の臨床現場ではあまり困らないと思いますが。

 

1.ヨード造影剤アレルギーのリスク

 

さて,ヨード造影剤使用を躊躇うような場面はどんな場面でしょうか?

オイパロミン®(ヨード造影剤)の添付文書を確認してみましょう。

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これを見るとやはりヨード造影剤の過敏症の既往がある場合は,できる限り避けたほうが良さそうです。(ちなみに,この添付文書の記載に関しては早川先生方の書かれた「造影剤添付文書の「原則禁忌」について考える」という記事がとてもまとまっております

 

Up to dateを見てみると,

The rate of acute adverse reactions from nonionic low- or iso-osmolar iodinated contrast is approximately 0.15 to 0.7 percent with >98 percent being mild and self-limited [8-11]. Fatality from iodinated contrast has been estimated at 2 to 9 per one million administrations [3,12]. 

と,その発生率は非常に低いことが伺われます。

 

American College of RadiologyのContrast Manual,European Society of Urogenital Radiologyのガイドラインでも同様の記載で,やはり過去の造影剤アレルギーの既往や,気管支喘息,アレルギー体質などは注意すべきrisk factorとして記載されていましたが,実際にどれくらいのrisk上昇を認めるのかは記載がありませんでした。

 

2.ヨード造影剤アレルギー(ヨード造影剤投与後の急性副作用)のリスクがある場合,前投薬はどうするのか

ここが,今回一番興味深かった点です。

American College of Radiologyでは,Given the tradeoffs between what is known and not known with respect to the benefits and harms of premedication, premedication may be considered in the following settings and scenarios:

とした上で,こんな推奨をしています。

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基本的には,「過去に造影剤で副作用のあった患者を対象に」「できるだけ検査の前から」「治療方針の決定を優先して」行うと言うような推奨になっています。

 

それに対して,European Society of Urogenital Radiologyでは「Premedication is not recommended because there is not good evidence of its effectiveness」 

と前投薬の推奨は特にないようです。

(ちなみに,前述の日本放射線医学会の提言ではEuropean Society of Urogenital Radiologyも前投薬を推奨している記載になっているようですが,ver9.0時点での記載なので,すくなくともver10.0ではpremedicationは推奨されていないと言うことになります)

 

American College of Radiologyの前投薬のレジュメンは以下の通りです。

・経口の場合

f:id:zawa99:20190928225525p:plain

 

・静注の場合

f:id:zawa99:20190928225629p:plain

こうしてみると,たしかに使用するステロイドの量も多く,使用が躊躇われますね。

なんやかんや,リスクの層別化が難しいこともあって,結局は現場の判断ということのようです。

 

3.もしもヨード造影剤アレルギー(ヨード造影剤投与後の急性副作用)が起こったら

Up to dateでも,各ガイドラインでもアナフィラキシーに準じた対応が推奨されています。以前の記事(http://zawa99.hatenablog.com/entry/2017/11/23/144100)でも少し引用しましたが,日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインが日本語で記載されていて,良くまとまっています。

 

基本的には,

1.まずはABCの確認(意識障害があればACLSに準じた対応)

2.ルートキープ,酸素投与,モニター装着,応援を呼ぶ

3.アドレナリン注(成人は0.5㎎,小児は0.3㎎が最大量)

アナフィラキシーのキードラッグはアドレナリンの筋注なのであまり躊躇わずに使用したほうが良いと思いますが,一応適応は下記の通りです。

f:id:zawa99:20190928232353p:plain

 

調べてみると,色々はっきりしないことも多く,すっきりしない記事になってしまいました。ただ,「分からないことが分かる」ということが臨床の醍醐味と言うか大事なポイントだと思いますので,今後元リンクの文献も読みこんで学んでみようと思います。

 

それでは。

 

【参考文献】

1.Stella K Kang, MD, MS. Diagnosis and treatment of an acute reaction to a radiologic contrast agent. http://www.uptodate.com (Accessed on September 28, 2019.)

↑意外とUp to dateはあっさりした記載でした。

 

2.早川克己ら.造影剤添付文書の「原則禁忌」について考える.(https://radiology.bayer.jp/static/pdf/auth/cm_faq/cm_faq_3.pdf

↑少し古いですが読みやすいです。

 

3.日本放射線医学会. ヨード造影剤ならびにガドリニウム造影剤の急性副作用発症の危険性低減を目的としたステロイド前投薬に関する提言.(http://www.radiology.jp/member_info/safty/20170629.html

4.American College of Radiology. Contrast Manual.(https://www.acr.org/Clinical-Resources/Contrast-Manual

5.European Society of Urogenital Radiology. Guidelines on contrast Agents.( http://www.esur-cm.org/index.php/)

↑各学会のspecialistの意見が違うのが面白かったです。

 

6.Anaphylaxis対策特別委員会.アナフィラキシーガイドライン.2014.(https://anaphylaxis-guideline.jp/pdf/anaphylaxis_guideline.PDF

↑おすすめ。まとまっているし,日本語。アナフィラキシーの対応は全ての医療従事者が学んでおくべきと思いますので是非ご覧ください

 

 

 

ケタミン(ケタラール®)の話

今回はケタミンについてのまとめです。

現在小児病院に出向中で,小児ERの勉強をしています。ケタミンを使用することが最近続いていて,質問を受ける機会もあったのでレジデントの先生向けにまとめることにしました。

 

救急領域の処置の際には活躍の場面の多い薬剤ですが,ちょっとクセあのる薬剤ですのであまり馴染みがない方も多いかもしれません。

 

ケタミンは,「呼吸・循環抑制を起こしづらく,鎮痛作用もあり,処置時の鎮静に非常に適した薬剤である」ただし,「添付文書では脳圧亢進患者や,外来患者では禁忌である」という薬剤です。

 

今回は,

1.ケタミンの特徴

2.ケタミンのメリット・デメリット

3.ケタミンの使用方法

の3点に絞って述べたいと思います。

 

1.ケタミンの特徴

ケタミンは大脳皮質機能を抑制↓する一方で辺縁系機能を賦活化↑させることから,解離性麻薬と言われます。ミダゾラムプロポフォールのような睡眠薬と違い,薬効作用が発現している時も,目が開いていたり,体動や発語があったりします。

一度ケタミンを使用すれば「こういう状況なのか」と腑に落ちると思いますが,はじめて見るときはぎょっとするかもしれません。

Procedural Sedation with Ketamine - YouTube

↑この動画の3分30秒頃から見ていただくとイメージ掴めると思います(男児の口唇を縫合する際に使用しています)

 

また,ケタミンを投与された本人は「白昼夢」や「悪夢」を見ると言われており,事前にその説明は行い,特に異性の処置の場合は1人でしないように(看護師や同僚などに同席してもらって)した方が良いと思います。

※ちなみに,「夢を見ることがありますが,良い夢を見ることが多いですよ」と声をかけると悪夢の頻度が減る可能性があるそうです。[1]

 

2.ケタミンのメリット・デメリット

以下に,簡単にメリットとデメリットを列挙しました。

<メリット>

・呼吸や循環抑制を来たしにくい

・鎮静だけでなく鎮痛作用もある

・古い薬で臨床研究も広くされている

・静注も筋注もできる

 →ショックの場合や,痛みを伴う処置(整復や小児の縫合など)に向いている薬剤と言えます。

 

<デメリット>

・体動が残る場合がある

・見た目が寝ている感じにならない

・嘔吐や流涎がある(大体2-5%程度 上気道のトラブルに注意)

喉頭痙攣(0.5%未満)を起こし得る(感冒の際などは発生率↑)

・悪夢を見る可能性がある

・「脳圧亢進」の可能性がある

・高血圧/頻脈を起こす可能性がある(重度の虚血性心疾患がある場合や,心機能が悪い患者さんの場合は注意が必要)

→可能性は少ないですが,気道緊急に発展する可能性もあるのでモニターや気道確保の道具・人など準備をしておく必要があります。(他の薬剤も一緒ですけれど)

感冒症状がある場合や,頭部外傷がある場合は注意が必要です。

 

<禁忌>

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添付文書上の禁忌を確認しましょう。

あくまでも添付文書上の禁忌で,実際の臨床の場面では禁忌に該当するようなケースでも使用することはあると思います。万が一トラブルがあると,訴追される可能性もあるので事前に患者さんに説明して,同意を得ておくことは重要です。

 

メリットとデメリットはコインの裏表の関係です。

例えば,ケタミンを投与すると血圧上昇/頻脈を引き起こします。血圧低下を招かないと言う意味ではメリットですが,心筋酸素需要を増すという点では重症心筋虚血の指摘されている患者ではデメリットになり得るわけです。

 

ちなみに添付文書では「脳圧亢進患者には禁忌」と書かれていますが,2014年にカナダからのメタアナリシスがあり,外傷でも非外傷性の疾患でも,ICPは上昇しない(場合によっては下がる)と言われています。[2,3]

 

3.ケタミンの具体的な使用方法

まず,鎮静をかける準備をします。具体的には,

□AMPLE確認 + 同意書取得

□モニター(EtCO2モニター含め)装着

□末梢静脈路確保(生理食塩水やラクテック®,ソルアセトF®など糖やKの含有のないものが良いでしょう)

□気道確保の準備(※)

□処置そのものに必要な準備

 

上記を終えてから,ケタミンの投与を行います。

日本国内ではケタラール静注用200㎎®(200㎎/20㎖の製剤)がありますので,そちらを用います。容量は下記の通りです。[1,4]

 

1-2㎎/㎏を1分かけて静注します。

追加投与は2分ごと,0.5㎎/㎏ずつです

1分程度でピークになりますが,作用時間はおよそ10分程度です。

 

ちなみに,硫酸アトロピンやベンゾジアゼピンの予防投与は不要と言う向きが多いようです。処置後は5分おきに意識状態の評価を行い,元の意識状態に戻れば帰宅可能です。帰宅後2時間は家族に慎重に観察してもらい,食事は控えるように伝えましょう[4]

 

※気道確保の準備,とサラっと書きましたが,やることは多いです。

まずマスク換気困難を「MOANS」で,挿管困難を「LEMONS」で評価し,最後に「SOAP MD」で漏れがないように準備をします。

 

■換気困難の指標「MOANS」⇒Mask seal,Obesity,Age(≧55),No teeth,Stiff lungs

(Mask sealはマスクの接着を邪魔する髭や顔面外傷がないかを確認。Stiff lungsはCOPDや喘息、妊娠後期でないかを確認します)

■挿管困難の指標「LEMONS」⇒Look Externally,Evaluate the 3-3-2 rules,Mallampati,Obstruction,Neck mobility,Space Skills

(Look Externallyは極端な肥満や小顎などないかを確認します)

MOANSやLEMONSで問題があれば,気道確保の熟練者(麻酔科や救急科など,病院ごとに決まりがあると思われますが)に相談をした方が良いでしょう。

■挿管前の準備「SOAP MD」

⇒Suction,Oxygenation,Air stuff,Pharmacy/Position,Monitor,Denture

意外とDenture(入れ歯やぐらぐらの歯がないかの確認は忘れがちなので注意)

 

この辺りは,ケタミン以外の鎮静薬を使用する場合でも共通事項ですので,鎮静薬を使用する場合は確認を忘れないようにしましょう。

 

以上,簡単ではありましたがケタミンについてまとめました。

実は,プロポフォール単剤よりもプロポフォールケタミンを併用したほうが,呼吸抑制が減る(俗にケトフォールと呼ばれます)[5]とか,持続静注で鎮痛薬として使用するとか,色々掘ると話はありますが,今回は基本編ということでここまで。

 

もっと詳しく,処置時の鎮静について学びたい方は,以下の本がおすすめです。

https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51vXI8-Al-L._SL75_.jpg

とても分かりやすい本ですので是非読んでみてください(COI全くありません)

それでは。

 

 

 【参考文献】

1. 乗井達守 編. 処置時の鎮静・鎮痛ガイド. 東京都. 医学書院. 2016.

2. Zeiler FA et al. The ketamine effect on ICP in traumatic brain injury. Neurocrit Care. 2014;21:163-173.

3. Zeiler FA et al. The ketamine effect on intracranial pressure in nontraumatic neurological illness. J Crit Care. 2014;29:1096-106. 

4. Steven M. Green, MD et al. Clinical Practice Guideline for Emergency Department Ketamine Dissociative Sedation: 2011 Update.Annals of Emergency Medicine. 2011;57:449-461.

5. Yan JW et al. Ketamine-propofol versus propofol alone for procedural sedation in the emergency department: a systematic review and meta-analysis. Acad Emergency Med. 2015;22:1003-1013.

 

 

VVECMOについて

少し更新が滞っていました。今回は,VVECMO症例の担当になりましたので,簡単にまとめました。

 

 

1.そもそもVVECMOとは

VVECMOはVeno-Venous Extracorporeal Membrane Oxygenationの略です。

静脈から脱血して静脈に送血するECMO(体外式膜型人工肺)のことを指します。

臨床現場では,呼吸ECMOなどとも呼ばれています。

ECMOは人工肺そのものを指す言葉で,ECMOを用いた生命維持処置のことをECLS: Extracorporeal Life Supportと言います。

慣習的に治療行為を含めて,ECMO,ECMOと現場では呼ばれることが多いです。

 

2.エビデンスと適応

2009年に発表されたCESAR trialは成人の重症呼吸不全に対する有用性を示したRCTです[1]。同年に流行したH1N1インフルエンザとそれに伴うARDSに対して,ECMOによる救命例が報告されECMOは脚光を浴びるようになったと言われています(自分は当時,薬理学のテストに苦しんでいました)。

 

また,ELSO(extracorporeal life support organization)がガイドラインをインターネット上で公開しています。(https://www.elso.org/Portals/0/ELSO%20Guidelines%20General%20All%20ECLS%20Version%201_4.pdf

 

ECMOの適応については,

 

①適切な呼吸管理を行なっているにも関わらず,死亡率が50%を超えるならECMOを“考慮” →FiO2>0.9でP/F ratio<150,Murray Lung Injury Score 2-3点

②適切な呼吸管理を行なっているにも関わらず,死亡率が80%を超えるならECMOを“導入” →FiO2>0.9でP/F ratio<100,Murray Lung Injury Score 3-4点が6時間以上持続

③適切な呼吸管理を行っているにも関わらず,pH<7.20

④肺移植待機中などbridge therapyとしてECMOが必要と考えられる場合

 

となっていますが,文献毎に微妙に違う部分があります。適応のポイントとしては,「可逆性のある肺障害で,なおかつ人工呼吸器管理の時間が短い(目安としては1週間以内である)こと」です。

可逆性のある病態である必要があるので,初期にウイルス感染,細菌感染,ARDS,Wegener肉芽腫症,肺胞蛋白症,重症喘息などを鑑別する必要があります。ECMOはあくまでも対症療法ですから,原因に対する根本治療がなければなりません。

 

人工呼吸器管理の時間に言及されているのは,人工呼吸器関連肺障害(VILI:ventilator inducedlung injury)が進行した状態では救命率が低くなると考えられているからです。

ただし,2018年に発表されたEOLIA trialでは重症ARDSにおいて早期ECMO導入群と,通常の人工呼吸器管理を行った群(ECMOへのクロスオーバーあり)で有意差がなかった[2]ことから,「いつECMOを行うか」ということはまた議論されそうです。(肺保護が大切であることと,ECMOそのものの価値を下げるものではないです)

 

※Murray Lung Injury Score

P/F ratio,胸部Xp所見,PEEP,全肺胸郭コンプライアンス(TV/(最大吸気圧-PEEP)で計算)

www.mdcalc.com

 

3.管理の実際

カニュレーション[3]

現在はリサーキュレーション(送血管からの血流を脱血してしまう現象)を防ぐ意味で,大腿静脈脱血-右房送血が多いです。脱血管には側孔がたくさん空いているので十分な血流を確保できます。

 

いずれも穿刺部位の血管をエコーで確認し,血管系の3分の2を超えないような太さを選択します。カニュレーション前に50-100単位/㎏のヘパリン(2500-3000単位)を静注し,

 

送血管は21-23Frで留置する位置は第7肋骨高位

脱血管は23-29Frで留置する位置は第11肋骨高位もしくは肝内下大静脈

 

の位置に留置します。血液流量は60-80㎖/㎏/minで開始します。

ちなみに海外では1本のカニューレで送脱血のできるカテーテルもあるようです[4]。(大腿静脈のカテーテルを省略できるので離床に良い。)

 

●呼吸器設定(lung restとLow SaO2の許容)

 lung restを目指した呼吸器設定を行います。一律の決まりはありませんが,

最大吸気圧20〜25 cmH2O,PEEP10〜15 cmH2O,呼吸回数10 /min以下,FIO2 30%を目標にする[5]のが一般的です。

ECMO導入後,いきなりlung rest設定にはせず6-12時間かけて徐々に低下させていきます。この時に経肺圧が高くなるような呼吸様式や体動がみられる場合には鎮静や筋弛緩薬を併用します。それでも呼吸器設定を下げられない場合は,ECMO流量不足の可能性が高いです。このlung rest設定に辿り着いた後は,原病の回復を待つのみです。呼吸器設定を変えずに,TVが上昇してくれば回復の指標の1つになります。

 

「肺を休ませる」ことを考えるならもっと圧を下げても良いように感じますが,合併症でECMOが停止するような事態になった場合の安全弁として,上記のような設定をrest lungと呼びます。

 

ECMO管理中の血液ガスの目標は

 

PaO2 45-60(SpO2 85) →ECMOの流量で調節

PaCO2 40 →スイープガスで調節

Hb →12-14g/㎗

 

となります[6]。

この管理のコンセプトがlow SaO2の許容です。

 

 まず,「送り込まれる血液の酸素飽和度」を考えてみましょう。

下大静脈脱血-右房送血の場合は,「ECMOにより脱血された下大静脈血流は酸素化され送血されますが,上大静脈に還ってくる血流はそのまま右房に流入します

上大静脈に還ってくる血流量を30%と見積もれば,

酸素化された70%の血液と酸素化されない30%の血液が混合します[6]。

つまり,末梢の酸素消費量が高い場合や自己心拍出量が低い場合などは,結果的にSaO2は下がりうるわけです。

SaO2が下がった場合,後述するような鑑別をしますが実際問題リサーキュレーションがある場合などはどうしたら良いかを考えます。

 

ショックについて勉強した酸素含有量の式を思い出してみます。

CaO2(ml/dl)=SaO2×1.36×Hb(g/dl)+PaO2×0.003(ml/mmHg・dL)(PaO2は数字が小さいので無視できるのでした)

 

1分間に運搬される酸素の量は,CO(心拍出量)に依存しますから

DO2=CO×SaO2×1.36×Hb(g/dl)

 

ですね。なのでECMOを使用しSaO2が下がっている場合は,Hbを上昇させることで対応することになります。

 

●鎮痛・鎮静

カニュレーション後12-24時間は鎮静を要することが多いですが,ECMOが安定してからは患者の容態に合わせて調整します。

基本的な考え方としては,メリットがデメリットを上回れば覚醒を目指します。(特に1週間を超えるようなECMO管理の場合は患者の容態によりますが,気管切開,Awake ECMOを試みることもあります。)

覚醒のメリットは,患者の意識レベルの評価が容易になること,リハビリができること,家族や医療スタッフのモチベーションの維持などがあります。

一方で,覚醒することによって暴れてしまう場合はデメリットが上回ると言えます。

他にもピンク状泡沫痰が吹き出したり,呼吸が努力様になってしまう,気胸や縦隔機種などが出来てしまった場合は鎮静や肺を休める意味での筋弛緩が必要となることもあります[7]。

 

ちなみに,シリコン製の膜型人工肺はフェンタニルミダゾラムを吸着すると言われており,鎮痛薬としてモルヒネを使用するケースもあります。

モルヒネの作用発現時間は5-10分で7時間以上持続すると言われていますので,ボーラス使用(5-10mg/回,4-6時間おき)で効果的と言われています。

 

●抗凝固

ECMO管理中はヘパリン投与を行い回路凝固を防ぐのが一般的です。

ACT160-180,PT-INR<1.5,血小板>7.5万/μLを保つように輸血を行います。

 

感染症

ECMO管理中は感染のhigh riskでありながら非常に判断が難しいです。1つの文献の中でも「監視培養を行って,フルコナゾールの予防投与を行うべきだ」「いや,監視培養は意味がない」[6]と意見が一定しません。

バイオマーカーや臨床経過をみながら判断するしかありませんが,ECMO管理が長期化するにつれて考慮すべき感染症が変わる可能性があります。

ECMO導入2週間程度まではいわゆるGNR/GPCが多いのですが,2週間を超えるとCandida,4週間を超えるとmaltophilia,2ヶ月以降はサイトメガロウイルスやアスペルギルスも考慮しなくてはなりません[7]。

 

トラブルシューティング

前述した感染・出血の合併以外に,ECMO使用中にもSaO2が低下する場合があります。多くはリサーキュレーションによるものですが,人工肺の消耗・カニューレ位置の変化と言ったマシントラブル以外に,自己肺機能の低下,心拍出量の低下,酸素消費量の増加を考える必要があります[7]。

 

●ECMOからの離脱

lung rest設定にいたり,原病の治療が奏功した場合離脱を考えます。

目の前の患者の「肺が良くなっている」ことを認識できなければ離脱を検討することができないので,胸部X線写真や人工呼吸器パラメータ,血液ガスを参考に徐々にECMOをweaningします。

最低流量になったところで,通常の肺保護換気の設定(30mmHg>Pplat,PEEP5〜10 cmH2O,FIO2 60%,TV6-8㎖/㎏など)に変更し,スイープガスをoffにして2時間経過観察し,呼吸が安定していればヘパリンを30-60分前にoffしてから,カニューレの抜去です。多くの施設で巾着縫合や圧迫止血でカニューレを抜去しています。[3,6]

 

4.おわりに

簡単にECMOの管理についてまとめました。

かなりvolumeの多い内容でしたので正確でない部分もあるかもしれません。

施設や文献ごとに管理が一定していないところもあるので,詳細な設定は是非ELSOが出版しているRed book(ブログ記載時は2017年が最新版)などを見てみてください。(※最新版は英語になります。)

 

またECMO管理の入門には下記リンクの小倉先生の本がとても分かりやすいのでお勧めです。

 

それでは。

やさしくわかるECMOの基本〜患者に優しい心臓ECMO、呼吸ECMO、E-CPRの考え方教えます!

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<参考文献>

1.Peek GJ,Mugford M,Tiruvoipati R,et al. Efficacy and economic assessment of conventional ventilatory support versus extracorporeal membrane oxygenation for severe adult respiratory failure (CESAR): a multicentre randomised controlled trial. JAMA 2009 ;374 :1330.

 

2.Combes A, Hajage D, Capellier G,et al EOLIA Trial Group, REVA, and ECMONet. Extracorporeal Membrane Oxygenation for Severe Acute Respiratory Distress Syndrome. N Engl J Med 2018 ;378 :1965-1975.

 

3.梅井奈央.呼吸ECMOの導入と管理.人工臓器 2017;46:208-211.

 

4.Bermudez CA, Rocha RV, Sappington PL, et al. Initial experience with single cannulation for venovenous extracorporeal oxygenation in adults. Ann Thorac Surg 2010;90:991-5.

 

5.市場晋吾, 清水直樹,竹田晋浩.重症呼吸不全に対するextracorporeal membrane
oxygenation(ECMO). 日集中医誌 2014;21:313-321.

 

6.市場晋吾, 落合亮一,竹田晋浩. ECMO Extracorporaeal Cardiopulmonary Support in Critical Care 4th edition<日本語版>.東京都: ECMOプロジェクト; 2015. 252-260.

 

7.小倉崇以,青景聡之. やさしくわかるECMOの基本. 東京都: 羊土社; 2018.